2006年11月24日

麻酔科医の評価

金沢大学大学院医学系研究科麻酔・蘇生学講座Blogに「麻酔科医の評価」という記事が出ている。最近、このブログは、アトラクティブである。この、麻酔科医のブログで、麻酔科医は総合力で評価されるからバランスのとれた麻酔科医がよいという意見である。レーダーチャートで解説しているのでわかりやすい。管理人も全く同感である。困った麻酔科医についても言及しているが、いずれもよくみられるタイプのようである。この2つのタイプのうち(1)は麻酔科医としてはまったく使い物にならない。(2)は患者にはよいが仲間や他の医療スタッフには嫌われるタイプである。その面積からいうと(2)の方が(1)より面積が広い。(1)のタイプは基礎系に進むべきだったのであろう。

2006年11月21日

Anesthesia Now

Anesthesia Nowという麻酔科の情報サイトがある(オルガノン提供)。

日本の麻酔薬の会社が出している情報誌はAnesthesia Today。名前が似ている。

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2006年11月20日

吸入麻酔のファ-マコキネティックス

「吸入麻酔のファ-マコキネティックス」諏訪邦夫 克誠堂出版 (1986/01) ISBN: 4771900612 、名著である。管理人も研修医の頃、大変お世話になった、1冊。水色(青色)と白の表紙で、印象が強い。当時、管理人の麻酔科学への興味を維持させ続けるきっかけになった1冊である。吸入麻酔について、こんなにも奥が深いということを思い知らせてくれた。これを読んで、麻酔に関する考え方が大きく変わったと思う。いまでは、少し内容が古いところがあるが、考え方を作るという意味では、凄い。20年前にここまで。ぜひ、一度内容をご覧ください。お宝になるかも。
新品はすでに手に入らなくなっているかもしれません。
写真は、管理人のものをスキャンした。なんとなく、この本の色づかいは、このブログの色に似ていると思いませんか。知らず知らずのうちに色まで影響を受けていたのかもしれません。

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2006年11月19日

Context-Sensitive Decrement Time(CSDT)

1週間ほど前Context-Sensitive Half Time (CSHT)に関する記事を掲載しましたが、麻酔ディスカッションリストで、ちょっと誤解されてしまいましたので、もう少し汎用的な指標について書いておきます。
Context-Sensitive Decrement Time(CSDT)という概念です。CSDTとは、一定濃度Cで投与しているところから投与を中止して、目的とする任意濃度に減少するまでの時間を表現するもので、CSHTが、血中濃度が半分になる時点(0.5×C)を指すだけ(CSHTは50%になるまでのCSDT)であるのに対して、CSDTは、より汎用的であると思います。
鎮静薬の場合、維持濃度から覚醒する濃度になるまでの時間、鎮痛薬の場合は維持濃度から副作用(呼吸抑制など)がなくなる濃度になるまでの時間(鎮痛作用がなくなるまでの時間ではない)が大切であるということ(副作用がなくなる濃度より鎮痛作用がなくなる濃度の方が低い)。
結局、CSDTを意識することによって未来の血中濃度(効果部位濃度)を予測するクセがつくまでトレーニングする必要があるということ。これらをきちんと意識することで、カンで麻酔薬を投与することから脱却しましょう。血中濃度(効果部位濃度)を意識するとともに、BISなどの脳波モニターや麻酔経過中の役立つ所見などで補正をかけることも個人差への対処には必要ですね。

参考サイト:
Rational Drug Selection in Neuroanaesthesia:the Effect Site and Context Sensitive Decrement Times
 Intravenous agents, TCI and TIVA (The Virtual Anaesthesia Textbook)
参考書籍:
■第3章 Good risk症例におけるTIVAの実際?調節するのはプロポフォールか?オピオイドか??p.47-63
 今日から実践できるTIVA(真興交易医書) 編著:木山秀哉 2006年6月 ISBN:4880037672

2006年11月15日

今の麻酔は情報戦(2)

さて,術野の情報は見ればわかると先の記事では書いたが,本当にそうでしょうか.管理人が研修医から研修医を終えたぐらい頃,信じられない外科医がいた.もしかすると今からここに書くような外科医は、今でもどこかに存在するのかもしれない...その外科医は、出血していても手で隠していて、出血していないと言い張る。ガーゼに血がついていて、重さを量ってもほとんど水だと言い張る。つまり、自分は出血させていない。輸液が多いから腹水が出ると常に言い張るのです。まあ、そういう状況もありましょう。しかし、常にはおかしいわけで、明らかにガーゼが赤い。ガーゼ重量が、まともに重い。挙げ句の果ては血液が大量にしみた柄付きガーゼを手術の最後まで出さずに腹腔内に隠しておく。さいごに出したとしても、術野の外のバケツに絞ってしまう。たちが悪いのです。こんなことは、ある程度経験を積んでくれば当然、嘘だとわかる。明らかに、術野が赤い。手術が雑。ここで、この外科医の言葉を信じたとしましょう。そうすれば、どこかで周囲の状況と食い違ってくるのです。しかしそれを見破る力を持ち合わせていなかったとしたら、術野を見て、別のパラメータを評価したとしても、逆の雑音が含まれているため、惑わされるかもしれません。これが判断する力です。この判断が速く、雑音に惑わされない能力を身につけるべく切磋琢磨(はやりの四字熟語?)するのが今の専門医の一つの方向性であります。これが臨機応変です。さらにいえばマニュアルにあるからそのようにすると言うのではなく、(小泉前首相みたいなことを言いますが)状況に応じて適切に判断し適切に行動するのが臨機応変です。臨機応変とは別に、専門医のめざすべき方向性、Tubokawa先生がいうところの創意工夫とはちょっとニュアンスが違います...この創意工夫ができるフトコロの広い麻酔科医をめざすべきだと管理人は思います。創意工夫はなぜするかというと、その状況に満足できないからです。こうすればもっとうまくいく。こうすればもっとよくなるというのをめざすから創意工夫をするのです。創意工夫がないということになると、次の課題がないと言うことになってしまいます。確かに、昔(50年前)に比べると麻酔科領域の課題は克服されてきて、ある一定のレベルに達したのかもしれません。薬剤の進歩、医療機器の進歩、道具の進歩。麻酔法や麻酔管理技術の進歩、麻酔教育の進歩、それぞれの進歩は患者の安全性や麻酔の確実性もたらしたでしょう。これからは過去に追い求めてきた創意工夫とはレベルの違う創意工夫が必要なのだと思います。これでいいのだ。と思ったとき創意工夫は必要なくなります。ワクワクする状況、アドレナリンの放出される状況は、創意工夫を企てている時に起こるような気がします。この創意工夫が必要ないとなれば、まともな麻酔科医はいなくなるに違いありません。臨機応変だけでは、真の麻酔科医はワクワクしません。

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2006年11月14日

今の麻酔は情報戦(1)

昔話にトラックバックします.昔は,モニターと言えば心電図と血圧計(手動ではかる)ぐらいで,残りは五感を利用して麻酔をかけていた.今は,痛みと侵襲のモニターをのぞいては,数値で表現される一応の指標があるため,だれでも,ちょっとしたことでもその気になって見ていれば気づくのは可能.しかし,情報を統合して判断する能力が昔に比べると要求されるようになった.バラバラの情報を統合して,はじめて意味をなす.モニターだけでは,はっきりとはわからないこともある.たとえば,ビデオ画像や内視鏡などを使った術野の情報である.その事実を見るだけで,何が起こっているかわかることがある.まあこれも,情報の一つ.要するに,昔に比べて判断材料が増えているのだ.五感を利用していただけの時代に比べて,情報が多い分,何らかの異常を捉えることはできるようになったが,判断スピードも要求されるようになった.判断に時間がかかっていたのでは,後手に回ってしまう.
戦争を例に出すと,批判されるかもしれないが,昔の戦争と今の戦争の違いと同じだ.如何に早く,情報を捉え次の手を打つかにかかっている.昔は,遅れて行動していたことが,今ではそんなに時間を待たなくても,情報が統合できれば先手に出られる.しかし,モニターの解析能力が上がれば,情報を統合する必要はなくなるかもしれないが,最終判断すべきは人である.また,どんな行動を起こすかを考え実行するのも人であるうちは,情報を統合してどこにどの程度の重みを置いて判断し,行動する能力を磨くことは無駄ではないであろう.
50年後に麻酔科医がいなくなるどころか,進化した麻酔科医とそうでない麻酔科医の差は歴然とするのではなかろうか.麻酔科医間の格差ができればできるほど,他科の医師では判断しかねる状態も増えるのではなかろうか.50年後にこの記事を読んでいる人は,笑うだろうか.感心するだろうか.

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2006年11月13日

Context-Sensitive Half-Time

Context-Sensitive Half-Time (CSHT)とは、ある薬物を一定の血漿濃度を維持するために持続静注した時、投与中止後血漿濃度が50%に減少するのに必要な時間である。教科書に,
こんな図

が書かれているのを見たことはありませんか。フェンタニルが大変なくせ者です。レミフェンタではCSHTは時間がたってもほとんど変化しません(こんな図にはでていません)ので問題にはなりませんが、フェンタニルでは2時間を超えたころから、同じ調子で入れ続けるとCSHTが次第に長くなってしまいます。こんなことを言うと、フェンタニルの使い方が下手な麻酔科医は、ただでさえフェンタニルの投与量が少ないのにさらに投与量を減らしてしまう懸念がありますね。そこでシミュレーションソフトが活躍します。賢い諸君はお気づきでしょうが、これらの話をするときには3コンパートメントモデルを理解しておくことが重要です。
レミフェンタニルほどCSHTが短く、時間がたっても変化しないものが出てくると、これまで、それほど気にならなかった(?私は気になっていたが...)プロポフォールが意外とくせ者だということがご理解いただけるでしょうか。
UKのサイトに、これらを理解するために都合のよいものがあるので、ここにリンク(右クリックで保存して、パワーポイントでご覧ください)しておきます。
ちなみに、CSHTは2005年度の麻酔科専門医筆記試験にも出題されています。今後、試験には必ずどこかに出てくる概念だと思います。

続きを読む "Context-Sensitive Half-Time"

2006年11月 7日

アルチバ

変な名前である.アルチバとは来年の2月頃発売されるレミフェンタニルの商品名である.ヤンセンファーマのサイトに出ています.
レミフェンタニルのミニ講座が「電脳麻酔ブログ」や「金沢大学大学院医学系研究科麻酔・蘇生学講座 Blog」で始まっている.
また「麻酔科医のお勉強」の TIVA/TCI にも関連情報にたどりつくためのリストを掲載しています.レミフェンタニルを含めた薬品の添付文書は「麻酔科医のお勉強」の麻酔薬の添付文書と販売会社にあります.ひさびさの麻酔科領域の新薬発売が楽しみです.

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2006年11月 4日

なんちゃってキセる麻酔

なんちゃってTCI”よりもっとすごいのがある.”なんちゃってキセる麻酔”である.管理人の行っている”キセる麻酔”はセボフルラン+フェンタニルのフェーズとプロポフォール+フェンタニルのフェーズが同時に存在することはない.つまり鎮静剤をプロポフォール→セボフルラン→プロポフォールと切り替える.これを”キセる麻酔”という.最初と最後がプロポフォールで真ん中がセボフルランであることから,たばこの道具である煙管(キセル)になぞらえたものである.これを,いつの間にか誤解して(拡大解釈して),なんだかんだと理由を付けて,常にプロポフォール+セボフルラン+フェンタニルで麻酔をしている人たちがいる.これは”なんちゃってキセる”である.断じて”キセる麻酔”ではない.この”まぜまぜ状態”を”キセる麻酔”とは呼んでほしくない.”キセる麻酔”命名者としては拒否である.”なんちゃってキセる麻酔”は,許し難い.”キセる麻酔”と呼ぶのなら,(鎮静剤は)どちらかにしてくれ.

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2006年11月 3日

なんちゃってTIVA と アンバランス麻酔

なんちゃってTIVA”と"TIVA"は、似て非なるもので、全く違うものであることを説明した。TIVAをきちんと行うにはバランス麻酔の概念をきちんと理解して実践することが必要である。バランス麻酔とは鎮痛、鎮静、筋弛緩の3つの要素を個別に調節して全身麻酔を実現する方法だ。バランス麻酔とは読んで字のごとくバランスで成り立っている。筋弛緩はともかくとして、バランスの基本は鎮痛と鎮静のバランスである。アンバランス麻酔の極みは、( 鎮痛 <<<<<< 鎮静 )というもので、鎮静を極端に行うタイプである。現在のTIVAの主流はフェンタニル(鎮痛)、プロポフォール(鎮静)であるが、バランス麻酔の概念は吸入麻酔+フェンタニルという組み合わせでも実現可能である。この場合、フェンタニル(鎮痛)、吸入麻酔薬(鎮静)である。最近では、フェンタニル+プロポフォール+吸入麻酔薬という方法も存在するらしい。管理人は、プロポフォールと吸入麻酔薬を同時には投与しない(キセる麻酔とは異なる)のだが、このプロポフォール+吸入麻酔同時投与では鎮静薬の過量投与となっているのではなかろうか?つまり、鎮痛 <<<<<<<<<<< 鎮静 というアンバランス麻酔ではないだろうか。よく、大阪大学の萩平先生(BIS解析の大家)の講演によく出てくる、セボフルラン1-1.5%+フェンタニル適量という吸入麻酔+フェンタニルの組み合わせの”黄金処方”があるのだが、これに対比すると鎮痛が少なくて済むと思いこんでいるのでhなかろうか。血圧が下がれば麻酔が深い、動かなければ麻酔が深いと思いこんであるのではなかろうか?
不意に予期せぬ?手術侵襲で足下をすくわれたときには、一時的にはアンバランス麻酔は許されるかもしれないが、きちんとコントロールする(していると思っている)場面では、いかがなものであろうか。
もう一度、鎮痛、鎮静、筋弛緩のコンポーネントについてきちんと整理して考えてみよう。全身麻酔では何を指標に行うのがよいであろうか。もちろん、血圧や脈拍などのバイタルサインのコントロール、筋弛緩による不動化なども必要かもしれないが、麻酔の本質は何であろうか。20世紀の麻酔の指標をすてて、別の観点からきちんと麻酔を見直す必要があるのではないだろうか。我々、21世紀の麻酔科医(第3世代以降)は、アンバランス麻酔ではなくバランス麻酔が実践できる麻酔科医をめざすべきではないだろうか。
【参考書籍】
◆バランス麻酔:最近の進歩改訂第2版 ―エンドポイント指向型バランス麻酔―

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2006年11月 2日

白い心6

白い心6にTBします.
全くその通りだと思う.やり方や道筋,方法というのは複数あってどれがよいというのは,簡単には決められない.
よりよい方法,よりよい理論を求めていけば,結局,複数の方法をマスターする必要がある.
そのときに,生半可(いいかげん)にこんな感じという調子では,新しい方法をマスターできるどころでなく,自分自身の思いこみで誤った方法を作ってしまうことになる.本当はそんなやり方でないのに,自分でマスターしたと思いこんでしまうのである.そうならないためには(本質を理解するには),やはり白い心が必要である.頭を白紙にすることが必要である.
とにかく,自分のやっているものと違うのであれば,その方法や理論を”きっちり”勉強する(まねる)必要があるのだ.その際に,思いこみが強すぎると”きっちり”まねできない.
話は変わるが,最近”なんちゃってTIVA”が横行している.血中濃度(効果部位濃度)を意識していないと思われるTIVAである.BISをつけたら?と言えば,BISはいらない.フェンタニルをもう少し入れたらと言えば,醒めなくなるからといってプロポフォールを高濃度でずっと維持している.呼吸が速い状態で麻酔から覚めてきて,目が開かない.うーん.こういった場合,その医師にどのように声をかけたらいいだろうか?難しい.自分で気づくしかないのである.
”なんちゃってTIVA”おそるべし.プロポフォールが出て10年も経って,TCIにも慣れた麻酔科医がたくさんいる時代である.”TIVA”と”なんちゃってTIVA”は違うものである.これに気づかないのは”白い心”になれないからではないだろうか.

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