2012年9月10日

Sanuki塾、入塾選抜試験

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sanucn.png私が麻酔を指導する症例についた初期研修医2年目や後期研修医にSanuki塾を開催している。あらためて、時間を取って講義しているのではなく、実際の症例についてその場その場で、麻酔管理の背景にあるものや技術的なポイント、医師、麻酔科医として考えるべきことなどを解説する。それを「Sanuki塾」と称する。最近は、「Sanu塾」ともいうらしい。この名称は、私がつけたモノではなく、自然発生的についたものである。さて、このSanuki塾の入塾選抜試験問題を公開しよう。筆記試験ではなく、口頭試問なので、要領よく答えなければならない。この試験の答えによって、どの程度の秘伝を公開するかどうかが決定する。さて、あなたはどの様な答えを述べるだろうか。時間にもよるが、このうちから2問程度を聞くことが多い。



「Sanuki塾入塾試験問題」(一部抜粋)

(1)手術の際にはなぜ麻酔をするのか?麻酔をせずに手術をすると何が起こるのか?順序立てて要領よく答えなさい。

(2)全身麻酔とセデーション(鎮静)の違いは何か?


(3)術直後(手術室内で)に全身麻酔から覚醒したと言って良い状態とはどの様な状態か。できなければならないこととできなくても良いことに分けて答えなさい。

(4)全身麻酔の際に、絶対に気管挿管をしなければ(しておかなければ)手術ができない症例とその理由をのべなさい(難問)。

(5)患者と術者にとって良い麻酔とはなにか。局所麻酔(区域麻酔)と全身麻酔のそれぞれについて答えなさい。それぞれの例を挙げて答える。術中と術後についても述べなさい(難問)。

2012年9月 8日

全力ですか?

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「全力ですか?」

久しぶりに、「全力」という言葉を聞いた。「全力ですか?」とは、集中治療病棟で抜管前に吸痰をしようとしたときに、リザーバー付きのアンビューバックに流す酸素について、ある看護師さんが発した言葉。「もちろん、全力で!」と答えたら、非常にうれしそうだった。「全開」の意味だと、すぐにわかったが、その場面では「全力」がふさわしい言葉だと思った。
もともと、「全力」という言葉が大好きな管理人である。物事を行うときに力が入りすぎて、空回りしてはいけないが、すると決めたとことは全力で行いたいと思う。数年前に流行った、スキマスイッチの全力少年が頭の中を回っている。術後患者の今日の抜管のテーマは全力少年であった。この全力少年の歌詞が、鋭いところをついている。いつもこの曲が、ぐるぐる回ったときにはこのフレーズがついて離れなくなる。
そのフレーズとは、2番そのもの。


遊ぶこと忘れてたら老いて枯れんだ
ここんとこは仕事オンリー 笑えなくなっている
ガラクタの中に輝いてた物がいっぱいあったろう?
"大切なもの"全て埋もれてしまう前に
さえぎるものはぶっ飛ばして まとわりつくものかわして
止め処ない血と涙で渇いた心臓潤せ
あの頃の僕らはきっと全力で少年だった
怯えてたら何も生まれない
澱んだ景色に答えを見つけ出すのはもう止めだ!
濁った水も新しいひかりですぐに透み渡っていく
積み上げたものぶっ壊して 身に着けたもの取っ払って
幾重に重なり合う描いた夢への放物線
紛れもなく僕らずっと全力で少年なんだ
セカイを開くのは僕だ
視界はもう澄み切ってる

1番は全力少年、2番は全力中年の歌だと思っている。

youtube「スキマスイッチ/全力少年」
youtube「全力少年 スキマスイッチ&小田和正 」


2012年7月 5日

m3.com カンファレンスに管理人登場

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ci_01.gifm3.comカンファレンス「臨床道場」に、管理人が7月3日(火)から7月16日(月)までの2週間登場します。「臨床道場」に登場するのは麻酔科医としては初だそうです。

医師の方は、m3comを覗いていただければ幸いです(登録は無料ですが会員制です)。

インタビュー記事はこちらです↓
http://www.m3.com/clinical/news/article/155361/

麻酔1◆検査時の鎮静に関する質問【讃岐美智義氏】
http://medqa.m3.com/doctor/showMessageDetail.do?messageId=135749

麻酔2◆全身/局所麻酔に関する質問【讃岐美智義氏】
http://medqa.m3.com/doctor/showMessageDetail.do?messageId=135748

麻酔3◆医師のデジタルツール仕事術【讃岐美智義氏】
http://medqa.m3.com/doctor/showMessageDetail.do?messageId=135747

2011年12月 8日

TIVAによる研修医へのアプローチ

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TIVAregi.png
アストラゼネカ社の麻酔サイト(登録必要)に、「TIVAによる研修医へのアプローチ(前編)」「TIVAによる研修医へのアプローチ(後編)」があります。第58回日本麻酔科学会のランチョンセミナーでの講演記録です。WEBで音声とスライドが見られます。

TIVAによる研修医へのアプローチ(前編)


TIVAによる研修医へのアプローチ(後編)

2011年8月25日

麻酔管理の5B(うるさめバージョン)

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以前に麻酔管理の3Aと3Bというのを紹介した。麻酔管理の3要素とは、3Bで表現できる。BP(Blood pressure:血圧、特に平均血圧)、BT(Body temperature:体温)、BIS(BIS値:脳波から導き出される大脳の活動度、鎮静度)である。麻酔管理は、全身麻酔中に3A「鎮痛(Analgesia:無痛)、鎮静(Amnesia:健忘)、筋弛緩(Akinesia:不動)」を満たすようにモニタをつかって生体を管理しつづけ、その最後には問題なく元の状態に戻ること。麻酔を導入したらおしまいというのではなく、研修医が学ぶべきことは麻酔維持中の状態をコントロールすること(指導医がどのようにコントロールしているかを見取ること)。麻酔薬の上げ下げだけに終始するのでなく、管理目標を設定してその状態に保つには、そのとき何をすべきかを判断すること。たとえば、リスクがない患者であっても3Bを意識する。血圧の管理目標は平均血圧で65以上に、体温(中心温)は37.0℃、BIS値は50を保つために、どうすべかを常に考えること。アラームが鳴らない時のモニタは眺めるものではなく、何をすべきかを考えさせる判断材料を与えてくれるものである。麻酔中は、モニタだけでなく、術野や、麻酔科医が行っている医療行為(麻酔薬投与、輸液や輸血、体温管理、人工呼吸および循環管理)を含めて状態の変化を考えること。といった。
勘違いして欲しくないのだが、気道管理や代謝管理がないと思っている研修医のためにうるさめバージョン「麻酔管理の5B」というのもある。5Bとは、Breath(呼吸管理)、BP(Blood pressure:血圧、特に平均血圧)&Beat(心拍数とリズム)、BT(Body temperature:体温)、BIS(BIS値:脳波から導き出される大脳の活動度、鎮静度)、BS(Blood suger血糖)である。麻酔管理は常に5Bを意識する。呼吸は気道確保だけでなく呼吸の調節を含む。また、最後に加えた血糖というのは、血糖をコントロールできるようにきちんと手術侵襲に勝てるような麻酔を行うことである。数年前から流行っている鎮痛主体の麻酔では手術侵襲によるインスリン拮抗ホルモン(アドレナリン、ノルアドレナリン、コルチコステロイドなど)の抑制が確認されており血糖コントロールは容易になってきている。これは何も術前合併症としての糖尿病患者の話ではなく、手術を受ける患者すべての話である。BS(Blood suger血糖)の目標は高くても150mg/dl前後に!術中に外科的糖尿病状態Surgical diabetes にしない麻酔を目指すのである。

2011年6月17日

全身麻酔の3要素(3A)と麻酔管理の3B

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全身麻酔(Anesthesia)の3要素とは、鎮痛(Analgesia:無痛)、鎮静(Amnesia:健忘)、筋弛緩(Akinesia:不動)と3つのAとして3Aで表すことができる。これは、知っているという方が多いと思う。これとは別に、麻酔管理の3要素とは、3Bで表現できる。BP(Blood pressure:血圧、特に平均血圧)、BT(Body temperature:体温)、BIS(BIS値:脳波から導き出される大脳の活動度、鎮静度)である。この3Bというのは、管理人が研修医によく言っているオリジナルであるが、これを話すと納得する。麻酔管理は、全身麻酔中に3Aを満たすようにモニタをつかって生体を管理しつづけ、その最後には問題なく元の状態に戻ること。麻酔を導入したらおしまいというのではなく、研修医が学ぶべきことは麻酔維持中の状態をコントロールすること(指導医がどのようにコントロールしているかを見取ること)。麻酔薬の上げ下げだけに終始するのでなく、管理目標を設定してその状態に保つには、そのとき何をすべきかを判断すること。たとえば、リスクがない患者であっても3Bを意識する。血圧の管理目標は平均血圧で65以上に、体温(中心温)は37.0℃、BIS値は50を保つために、どうすべかを常に考えること。アラームが鳴らない時のモニタは眺めるものではなく、何をすべきかを考えさせる判断材料を与えてくれるものである。麻酔中は、モニタだけでなく、術野や、麻酔科医が行っている医療行為(麻酔薬投与、輸液や輸血、体温管理、人工呼吸および循環管理)を含めて状態の変化を考えること。ここで、麻酔科研修チェックノート(第3版 p.154)のコラム「攻めの麻酔と守りの麻酔」を思い出して欲しい。攻めの麻酔(先手の麻酔)とは「患者の状態の変化,手術侵襲の変化を的確に捉えて,あらかじめ予測して積極的に輸液管理,循環管理,呼吸管理などを行い適切な麻酔状態に維持すること」で、守りの麻酔(後手の麻酔)とは「ただ漫然と麻酔薬を入れるだけ」と書いているのはこのことである。血圧が下がれば、麻酔薬の投与速度を下げ、血圧が上がれば麻酔薬投与速度を上げるだけではいけない。

続きを読む "全身麻酔の3要素(3A)と麻酔管理の3B"

2011年4月22日

ミズチバ、ウスチバ、ユカチバ、ユルチバ、トメチバ、ウソチバ、カラチバ

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ultiva.pngアルチバは発売以来、多くの施設で採用され全身麻酔には必須のオピオイドになった。きちんと使用すれば、名人でなくとも上手な麻酔管理ができる可能性がある魔法のような薬であると思う。しかし、使い方を誤れば危険きわまりない薬であることも確かである。今回は、上手な使い方ではなくトラブルに関連する言葉を紹介しよう。(1)ミズチバ、(2)ウスチバ、(3)ユカチバ、(4)ユルチバ、(5)トメチバ、(6)ウソチバ、(7)カラチバである。有名な言葉もあれば、管理人のオリジナルの言葉もある。一番有名なのは(1)ミズチバである。これは、アルチバが粉末で提供されているため、起こりうるトラブルをあらわす言葉である。アルチバを溶かさずに生食や蒸留水(溶解液)のみを注射器に入れて、アルチバラベルを貼り付けてシリンジポンプにセットしてしまうことを表す言葉である。水をアルチバと思って投与するから来ているのであろう。これは、全国区の言葉である。(2)ウスチバというのもある。これは意図的に行われることが多い。アルチバを溶かす際に、こぼしてしまったため、さらに溶解液で希釈してシリンジポンプにセットしている状態を指す。これは、「今日のアルチバは効きにくい」と指導医が言葉を発したときに、希釈した者がその真相を明かさなければ決してばれない。希釈現場を目撃されている場合は、話は別である。(3)ユカチバというのもある。これは、アルチバに延長チューブ(エクステンションチューブ)を接続したが、エクステションチューブを輸液ルートに接続せずに、アルチバを床に流すことを指す。(4)ユルチバも同様の意味だが、シリンジとエクステンションチューブあるいは輸液ルートとの接続が緩んでいて、アルチバが漏れている状態を指す。ロックつきでない注射器やエクステンションチューブを使用していると起こりやすいが、ロック付きを使っていてもきちんと閉めていないとおきることがある。(5)トメチバというのは、エクステンションにロックがついたタイプの物や3方活栓を使っている場合に起こりうる。ロックを外さすに注入を開始するか3方活栓を開かずに注入を開始したときに起きるものである。この場合はシリンジポンプのアラームが鳴って気づく。また、アルチバの効果が強く出て、シリンジポンプを一時停止した場合に、止めていたことを忘れていた場合にも使う言葉である。シリンジポンプは、2分間停止しているとアラームをアラームがなるのであるが、たまたま、そのとき周りが騒々しくて音が聞こえない場合、さらに長時間停止していることに気づかない場合などである。(6)ウソチバというのは、ガンマ計算(管理人はガンマは口語であると思うのだが、テルモのシリンジポンプには堂々と表記してある。)つきのポンプで投与した場合、1mg/mlの希釈数値以外、あるいは体重kgを誤って入れた場合に起きる投与速度の誤りである。たとえば、体重80kgを8kgと入力すれば、投与速度はガンマの値を信用して入力すれば1/10になる。(7)カラチバというのは、ミズチバとと同じ意味を表すこともあるが、別の意味もある。シリンジ混入した空気をきちんと追い出さずにポンプにセットした場合、最後は空気を押していることになる。大抵はエクステンションチューブ内で空気は止まるので患者には入らないが、その後が問題である。次のアルチバをセットするときに、エクステンション内の空気を抜くのに時間がかかり、手間取ることが多いからである。ご存じの通り、アルチバの半減期は短いため、すぐに血中濃度が下がっていく。ぎりぎりの濃度で麻酔をしている場合には、特に慌てることになる。トラブルが起きるからといって不必要に高濃度で行うのも問題ではあるが。。。。

薬剤バーコードラベルに思う(msanuki.net)
成長した?フェンタのシール(msanuki.net)

この中で、最もまずいのはミズチバである。他のものは、状況を見たり聞いたりすれば判断できるのであるが、ミズチバだけは、思い込んでいる場合があるので、気づきにくい。管理人のようにいつもミズチバでないかと疑ってチェックする習慣がある場合は別であるが。。。(研修医を疑うわけではないが、必ずチェックする)。この、ミズチバであるが、一番の原因はラベルが別付けになっていることが、それを誘発すると考えている。他の薬剤、たとえばフェンタニル(三共)やエスラックス、ブリディオン、エフェドリンなどはアンプルやバイアルに切り離せるラベルがついている。現在、このようなラベルがある薬剤が増えている中、アルチバがどうしてバイアルに切り離せるラベルをつけないのか。別付けのラベルは、以前は当たり前であったが今は亜流である。当院の麻酔カートに入っている、希釈する薬剤でアンプルに切り離せるラベルがついていないのは、ネオシネジンぐらいである。また、最近はプレフィルドシリンジも多く発売されており、余計な手間を省くことで、その過程で生じるトラブルを未然に防ぐ対策が取られている。
ミズチバの発生する状況は、溶解液だけを吸ってラベルを貼り付けているときに起きるのである。以前、ある先生が溶解液を吸ってラベルを注射器に対して縦に貼っていたことがあったが、それを見た別の先生が正しい位置に貼り直してシリンジポンプにセットした事例があった。
「とにかく、別付けラベルはアルチバを希釈した後でないと貼り付けてはいけない!!」
別付けラベルではなく、バイアルに切り離せるラベルを早期につけてもらうことを希望する。 by さぬちゃん

2011年3月11日

「自分探し」を終わりにしよう

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自分探しを続けている人は多いと思う。個人によって、その意味は大きく異なると思うが、最近、自分探しをすることで終わってしまっている人を見ることがある。自己啓発書流行もそれを象徴している。内容がない自己啓発書が多いことも気になっている。ある日、管理人の中学生の娘が、ある自己啓発書を斜め読みして「こんなの当たり前じゃん。本にする意味がない」と言ったことがある。たしかに、内容がない。しかし、本屋には平積みになっている。この状況は問題である。
さて、それとは別に、自分探しをいつまでも続けているモラトリアム人が目につく。いつまで、猶予期間なのだろうか。そろそろ、責任を持って、自分で自分の考えで、行動を起こすべきではないだろうか。いつまでもモラトリアムを続けていると結局何もできない人を大量に作ってしまうことになる。心当たりのある方は多いはず。管理人の考え方を補足する意見を述べているサイトを見つけた。参考にしてみてほしい。

「自分探し」にとどめを。(teruyastarはかく語りき)

2011年1月30日

岡田武史参与協力「最強チームの作り方=体験活動」15分版:文部科学省

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岡田武史参与協力「最強チームの作り方=体験活動」15分版:文部科学省  が出ています。
岡ちゃんがかっこいいです。なぜかって。みてください。

>岡田武史参与協力「最強チームの作り方=体験活動」15分版:文部科学省 (Youtube)

2011年1月13日

気管挿管特集

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日経メディカルに取材されたり、医学雑誌に掲載された気管挿管手技に関するコンテンツが日経メディカルオンラインに掲載されている。35歳以下しか見られない記事もありますが、まとめて以下にリンクをおいておきます。ご利用ください。会員登録をしないと見られませんが、会員登録は無料です。

日経メディカルオンライン
喉頭鏡は面で押す
気管挿管のコツは180度のクロスフィンガー(35歳以下限定)
気管挿管(35歳以下限定)


msanuki.net 気管挿管事前学習サイト2006/5

2011年1月 9日

マイケル・サンデル先生の授業の進め方に思う

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年始にマイケルサンデル先生の「ハーバード白熱教室」の再放送があった。内容は以前にも見ていたのでそれほど新鮮みはなかったが、今回、見直して参考になったのは、講義の進め方やプレゼンの方法である。まず、ジョブズとちがって、プレゼンにもったいをつけない。聴衆とのやりとりに中で、間を持たせる場面はない。その必要がないのだ。聴衆が完全にサンデル先生を絶対視しているため、その答えを期待している。早く正解を知りたいと思っていると言うことだ。その手法には、我々が研修医の指導をするときに参考になる要素が多く含まれていると感じた。サンデル教授のやり方をまとめると、
1. 参加者の意見を整理し、シンプルにして言い直す。
2. 望ましい答えが出るまで(ある程度は)我慢強く聞き続ける
3. 駄目だと思ったら、ばっさり切って別の人に繋げる
そして、必ず、自分が話の主導権を握っていると言うことだ。通常は1と2は指導者ならある程度の人ができると思うのだが、3に関してが、その能力を大きさを示すものであると思っている。これができるかできないかが指導者としての資質であると思う。相手が多数なら、別の人にふればよい。もし、マンツーマンの指導であれば、指導者のやり方(ヒントや要領をしめす)を見せるということになると思う。1と2を繰り返すのみであれば時間がいくらあっても足りないのである(3のやり方がサンデル先生は非常にうまい。話を切り替える部分に関しては、似ているが別の例を提示して条件を狭くしている。ここが非常にうまいのだ)。
サンデル先生が、これができるのは聴衆との間に、絶対的な哲学の知識や考え方の能力の違いがあるからだと思う。ちょっとわかっているぐらいだと、方向性を見失ったり、間違ったことをしていても自身を持ってそれをただすことができない。制止することができないのである。指導者として目指すのは、自分自身がぐらつかない知識や技術を身につけること。間違っていたら正しい方向に導くことができることである。そのように導いていく課程で、聴衆(相手)を従わせることができるカリスマ性であると感じた。
ジョブズのプレゼンとはまた違った味があり、アカデミズムを感じさせるよい例である。

NHK ハーバード白熱教室
ハーバード白熱教室パック 全12回(NHKオンデマンド)

2010年12月31日

守破離

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規矩作法 守り尽くして 破るとも 離るるとても もとを忘るな
千利休
千利休の言葉である。これは、守破離(しゅはり)といい、武道や禅の教えを歌に詠んだものです。

「守破離」というのは、ある道を究めるのに、歩むべき3段階のこと
 
「守」とは、師や各流派の教えを忠実に守り、それからはずれることのないように精進して身につけよ、という意味で初めの段階で、これが基本(もと)です。

「破」とは、今まで学んで身につけた教えから一歩進めて他流の教え、技を取り入れることを心がけ、師から教えられたものにこだわらず、さらに心と技を発展させよ、という意味。

「離」とは、破からさらに修行して、守にとらわれず破も意識せず、新しい世界を拓き、独自のものを生みだせ、ということ。

さらに、「離」の段階に至っても基本(もと)を忘れないようにしなければならない。

これは、麻酔科医にとっても言えることで、麻酔科専門医をとるくらいまでは「破」や「離」を考えずに基本をみっちり身につけることが大切。その基本が身についていなければ、「破」や「離」の境地に至ることはできません。その道を極めるなら「離」に到達したいものです。

2010年12月 9日

何を考えて動作を見るか?

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いろいろなモノを見るとき、たとえば、気管挿管、硬膜外穿刺、麻酔導入の手順、麻酔維持中の一挙手一投足などを見るとき、何を考えてそれを見るかということ。一番の基本は、自分がそれを行おうとするのにまねをするためにどこにポイントがあるかどうかを見極めたいと思うことである。ぼーっとして見ているのではなく、自分がやるとしたらどうしなければならないかを頭にインプットしながら見ることである。1回だけ見てまねできることは少ない。何度も違った角度から見てみること。たとえば、形だけをまねするのではなく、その形になる必然性などが考えられればよい。考えながら物事を見つめるというのが、大切に思う。
若い頃、師匠に言われた言葉「考える麻酔科医を目指せ!」を今でもことあるごとに思い出す。この、考える麻酔科医を目指すためにいろいろ考えてきたことが、新たな視点から物事を見るための原動力になっている様に思う。
物事を見るときには、本当の意味を考えながら見るクセをつけるというトレーニングを若い頃から行ってきたからこそ、人と違った視点でモノが見られるようになったのではないかと考えるこの頃である。
電脳麻酔ブログにSanuki先生の視点と書いてあったので、ちょっとコメントでした。
最近、研修医の手技を写真に撮って、手術室内で解説すると、それを(ブログで)公開しないでくださいねと釘を刺されるようになった。これまで、研修医の手技を写真で公開したことはないんだけど。。。

2010年11月 6日

TIVAは麻酔科医を育てる麻酔法である

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まさに、その通りだと思う。この言葉は、2010年11月5日の第30回日本臨床麻酔学会のランチョンセミナー「研修医から指導医まで役立つTIVAの実際」という講演で宇部興産中央病院麻酔科の森本康裕先生が最後のスライドで示された言葉(名言)である。吸入麻酔を併用した麻酔に比較してTIVAでは実力が試される局面が比較的多い。その意味で、麻酔科医はいろいろなことを考えながら麻酔管理に臨まなければならない。
管理人のところでは、研修医にもTIVAを教えている。というか、ほとんどがTIVAの症例なので、その中で研修医を教育する必要がある。研修医にTIVAを指導するためには、指導医自身がTIVAに精通していなければならない。
普通に考えると、研修医にTIVAをさせようと思うと結構ハードルが高いと思われている。指導医はそれなりの覚悟をして研修医を指導する必要がある。その意味でも、精神的にも麻酔科医(指導医)を育てる麻酔法であるといえる。

2010年9月18日

プレゼンテーションの相手(聴衆)

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同じテーマで話をする場合でも、プレゼンテーションを聞いてくれる相手(聴衆)によって内容(話の流れ、深さ、構成、スライドに書くこと)が異なる。当たり前と思われるかもしれないが、それがプレゼンターが一番はじめに知りたいことである。聴衆のレベルがばらばらだと、話を一番下のレベルに合わせる必要がある。そうすれば、レベルの高い人はつまらないと思う。逆に、一番高いレベルにあわせると、ほとんどの人がわからない。中間に合わせても、上と下の人たちからは批判が出る。
管理人が、講演を依頼されたとき聴衆のレベルはどのくらいかを、一番はじめに尋ねる。学会や研究会であればだいたい想像がつく。問題なのは企業の主催あるいは職種の違う方々への講演である。この場合は、だいたいこれぐらいという感じで、プレゼンを用意しておいて、当日、聴衆の反応を見て講演中に再調整が必要になる。反応をみながらなので、ちょっとした駆け引きが必要である。最初の「つかみ」の部分で、それがわかれば、結構うまくいく。
最近、ちょっと困っているのがWEBやビデオによる講演である。内容に関しては、用意はできるのだが、聴衆の反応が全くわからない。ひょっとすると、つまらないかもと思い始めると、話の流れが悪くなる。学会では、結構、プレゼンがうまいと思う先生でも、聞いていると当たり前のことを強調して時間をかけて説明したりしている。これは、聴衆の反応が見られないために微調整が全くできないためである。また、棒読みに聞こえたりするのも、そのせいだと思う。

2010年9月12日

エコーガイド下中心静脈穿刺

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2010年麻酔科エキスパートセミナー in Hiroshimaでもご指導いただいた、徳嶺先生のサイトです。

エコーガイド下中心静脈穿刺

2010年7月16日

九州じゃんがらに学ぶ新人教育

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秋葉原での昼食は、九州じゃんがらラーメンで決まりだろう。そこでの、研修中の新人に対する、指導の仕方のおはなし。とくに、指導法のマニュアルがあったりするわけではなさそうであるが、ある日、チーフ(フロア係)が研修中の新人に注意をしているシーンで、参考になるものがあったので、書いておこうと思う。研修中の新人は、昼時で混雑している状況で、外に並んでいるお客の並びを整理しつつ注文を聞いて伝える仕事をしていた。その新人君、丁寧な言葉でお客さんを誘導しつつ注文を取っていた。それを、フロアにいたチーフが店の中から様子を気にしつつ仕事をしていた。新人君が中に入ってきたとき、どこが悪いかをチーフは、ひそひそ声でなく比較的はっきりした言葉で、新人君に伝えていた。管理人も入り口付近でその様子を見ていた(聞いていた)。「注文を取る前に、必ず、いらっしゃいませと言いなさい」、これだけの注意だったのだが、お客さんの前で、聞こえるように注意を与えていた。ひそひそ声でなく、強くしかるわけでなく、いじめているような語気でなく、いやみなく短い言葉で、注意を与えていた。これだけでは、なかなか雰囲気が伝わらないと思うが、管理人は共感した。状況にもよるが、必要なことは、その場でその都度教えることができている。忙しい中で、どのように教育するかという命題に答えていると思った。医師の教育も同様である。教育する内容にもよるが、その都度言わなければならないことを言わないまま、放置している状況を見かける。そんなことはないだろうか。
話は変わるが、ここの九州じゃんがらラーメンのスタッフの一人一人の対応が気持ちよい。マニュアル風ではなく、きちんと声を発して、自分の仕事に誇りを持っているように見受けられる。客への対応の良さはそこから生まれるのではないだろうか。ラーメンがうまいだけではなく、気持ちがよいラーメン屋なのである。

2010年6月20日

閉腹時の筋弛緩薬投与

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閉腹時に外科医におなかが硬いといわれることがある。その意味合いは様々で、本当に硬いと思うこともあれば、ついついクセで言ってしまう外科医もいる。本当の場合は、明らかに腸管が見えている。言いがかり(管理人はそう呼んでいる)の場合は、腹壁を引っ張っても内容が出てくるわけではなく、腹腔内にきちんと腸管は収まっている。気のせいなのである。
気のせいでない場合は、麻酔を深くするか、筋弛緩薬を少量投与すれば大抵は喜んでくれる。以前は、アルチバを増やすかプロポフォールを増量して対応していたが、最近、ブリディオンを使うのを前提に、筋弛緩薬を投与することも多くなった。ただし、常時、筋弛緩モニターでTOFは確認、表示している。最近、問題に思っているのは筋弛緩をモニターせずに筋弛緩薬を追加投与する場合である。管理人が指導しているのは、筋弛緩薬が切れるのを確認できてから追加投与をすることである。筋弛緩薬が切れるのを確認せずに、漫然と追加投与すると全く反応しないまま、閉腹を迎える。そこで、おなかが硬いと言われて慌てて、筋弛緩薬を投与し、抜管前にはじめて筋弛緩をモニターするとTOFも1発も出なければ、50Hzテタヌス刺激にも反応しないのをみたことがある(当院ではない)。こうした場合、ブリディオンであればどうすればよいのか。ブリディオンの投与量の目安は、ロクロニウム投与直後:16mg/kg、1-2 in PTC:4mg/kg、T2 in TOF :2mg/kgである。PTCが出ないといけないのだが反応がないと言うことは4mg/kgではいけないのだろう。ロクロニウム投与直後と同量の16mg/kgを投与すべきかあるいは1-2 in PTCを待つべきなのか。筋弛緩モニターで筋弛緩の程度を評価していないと、こんな事態になる。テタヌス刺激に反応しない理由が、本当に効き過ぎているのか、モニターの使い方が悪いのか突き止めなければならないが、いずれにしろ問題である。せめて、1回ぐらいはTOFで1発か2発出る(初回投与量が筋弛緩薬が切れてくるかどうか)のを確認して、筋弛緩を追加投与するクセをつけておかなければいけない。
筋弛緩モニターなしで盲目的に筋弛緩薬を投与する時代ではないだろう。筋弛緩モニターがない場合にも、せめて神経刺激装置でTOFぐらいは、1回は術中にモニターして欲しいものである。ブリディオンというのは、筋弛緩の残存具合により投与量を変える必要のある薬剤であるというのをお忘れなく。

2010年5月28日

独りよがり麻酔症候群?

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プロ麻酔科医さんのところに「独りよがり麻酔症候群」という記事が出ている。

この記事によると、「独りよがり麻酔症候群」とは
>初期研修医では稀だけれど,麻酔科後期研修医では経験年数とともに徐々に頻度が増す疾患。
この一群は指導医とともに麻酔を担当しているにもか関わらず,あたかも指導医がその場を離れるのを見計らっているかのようなタイミングで指示していないことを行なってみたり,指導医に相談すべき事象が発生した際に自分の判断で治療を行なってしまうのが特徴。
ほとんどの場合,誤ったことはしていないため,強く修正しずらいし,叱責する必要も無い。
少ない経験を根拠としているため,自分が行なっていることが確信に変わっていく可能性がある
>鬼ほども恐ろしい指導医であったり,指導医を強くリスペクとしている研修医では見られない症状であある。
どちらかというと後者の関係は健全だし,美しい。

同じような経験は、管理人にもある。もちろん、指導医としてだが。。。
いろいろ、やってみたいと思うのはわかるが、根拠に乏しく、直感や風習にとらわれた行為であることが多い。
間違っていないかというと、考えが間違っていると思うこともある。
管理人は、大抵のことは許容するが、明らかに考えが間違っていることに対しては、厳しく指導する。
特に、患者を危険な目に陥れた場合には、鬼よりも怖いと言われている(これまでに、管理人を激怒させたのは2人しかいない)。
根拠があって、説明ができて、それが思った通りに運べば、やり方が異なっていても問題はない。ただ、なんとなくやってみた。根拠はない。そして、失敗したというのは大問題である。

大抵は、○○先生に習った。○○先生のやり方といういいわけが、多いのも事実である。○○先生の本質を理解しないで、うわべだけをまねた結果であることが通例である。
不完全な故に間違った行為を行ってしまっている。本人は正しいと思い込んでいるのだから、修正はむずかしい。
しかし、真意を聞き出し正しい考え方を伝授するのが、指導医である。放置するのはいけないと思う。

最近、若手の先生が危険なことをしていても、注意しない指導医を見かける。気づかないのか、注意をすると関係が悪くなるとおもっているのかわからないが、こういった指導医は問題である。間違っていることは間違っている、正しいことは正しいと、修正できないのは指導医ではない。どういった方法で、教えるかが大切である。
○○先生の真意を汲んだ方法を教えてあげるのがよい。また、うまくいかなかった理由も説明できると、指導医としての評価は高まる。

るなさんのコメント
プロ麻酔科医さんの「自分も成長するために」

を読むと、指導医としての方向性は同じだと思い、安心する。

2009年10月25日

プレゼンテーションで声が小さいのは

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症例プレゼンテーションを聞いていると、声が小さいと感じる人の共通点がある。必ず、うつむいて紙をみて(読んで)プレゼンをしている。これでは、発声がうまくできないのだ。麻酔科医なら、気道を開く(確保する)ことができていないと言えばわかるであろう。つまり、気道が閉塞しているために発声がきちんとできていないのである。背筋を伸ばして前を見て、気道を開けば発声ができるのである。このことをおろそかにしている。声楽家はうつむいて発声をすることはない。「気道を開く」がキーワードである。以前、msanuki.orgで気道を開くために姿勢を正すことを紹介したが、まさにそれである。前を向いて、スニッフィングポジションをとる必要がある。それを自然に行おうと思えば、msanuki.orgに紹介したような肩甲骨の外放が必要になるのだ。

前を向いて肩甲骨を外放するとき,あごと頚の力を抜いてみると,少しあごが前に出て気道が解放される感じが出ます。下を向いている(あごに力を入れて引いていると)と,気道が解放される感じは出ません。前を向く視線が大事なんですね。

管楽器奏法の考察「オーバーブローを防げ」(msanuki.org)