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脈波形の呼吸性変動

●脈波形の呼吸性変動に寄せて

1.パルスオキシメータの振幅の呼吸性変動は術中の輸液負荷反応の指標になる

2.脳手術中の患者で輸液負荷の指標として一回拍出量の変動をみる

3.動脈圧変動のオンラインモニタリング

4.Datex AS/3モニター上で収縮期圧変動を測定する方法

5.低血圧患者での輸液負荷後の反応性を動脈圧とパルスオキシメータの動的な指標でみる臨床試験

6.段階的に出血させたのち輸液負荷をした場合の動脈圧変動を人工呼吸と自発呼吸でしらべる

7.人工呼吸中の動脈圧の変動

8.人工呼吸中の犬に大出血をさせたときの脈圧と一回拍出量の変動

9.手術室でパルスオキシメータ波形振幅の呼吸性変動をモニターする脈波変動指標PVI(pleth variability index)と輸液負荷に対する反応性

10.ICU患者の輸液反応性の予測

11.心臓の充満圧は血管内ボリュームの変化に対する血行動態の反応を予測するには適切ではない

12.人工呼吸患者の輸液反応性-集中治療での指標

13.プレチスモグラフの動的指標で人工呼吸中の敗血症患者の輸液反応性がわかる

14.重症の爆風損傷後の血行動態モニター上の動脈圧変動

15.小児の心臓手術後にパルスオキシメーターで奇脈を検出する


脈波形の呼吸性変動に寄せて

広島大学病院麻酔科 讃岐美智義


4年ぶりのモニターワールドである。久しぶりのモニターワールド抄訳のテーマを何にするかで、2週間近く悩んだ。気合いが入って得意の文献検索を繰り返したが、ぱっとしない。結局、自分が興味を持って最近、追いかけていた文献を選択することにした。それが「脈波形の呼吸性変動」である。
「脈波形の呼吸性変動」というのは、最近、流行の脈波形で血管年齢を推定するもの(指尖容積脈波と加速度脈 http://www.geocities.jp/biomentaljp/ptg.htm)ではない。手術中あるいは全身管理中に、人工呼吸で肺に陽圧をかけたとき脈波が呼吸性に変動することが、輸液負荷の効果が現れるかどうかを予測するためのものである。
 昔から、”いわゆる”ハイポボレミアの状態では陽圧呼吸を行ったときに、脈波形が呼吸性変動を引き起こすことが知られていた。動脈圧波形が呼吸性にUP、Downを起こした場合は、ハイポボレミアなので輸液をしっかり入れるように、教わってきた。それが、モニター上の数値の変化として捉えられるようになったために、このような文献が出始めたとも考えられる。また、以前は観血的動脈圧をモニタリングしていないとわからなかったものが、最近ではパルスオキシメータのプレチスモグラフで判定できそうな気配である。観血的なモニターから非観血的なモニターへの流れである。
 パルスオキシメータにとっては、基本的なバイタルサインにとどまらず、それから派生した脈波形の呼吸性変動の定量化が表現できれば、新たな使い道としてもてはやされるだろう。うまく定量化するには、センサーの技術や波形表示、アーチファクトの除去など多くのパルスオキシメータの技術進歩によるところが大きい。一例として、MASIMO社から発売されている脈波形の変動を表現できるパルスオキシメータがある。脈波変動指標PVI(Pleth Variability Index)(http://www.hyssa.com/masimo/info/JPVI.pdf)が測定できるものである。以前はうまく捉えられなかったものが、モニター上で捉えられるようになり、臨床医に有用な情報を提供してくれるというのがモニターのあるべき姿である。五感を数値化して定量的に教えてくれるのがモニターである。しかし、その原理を十分に理解し、限界を知っておく必要がある。そういった意味で、その技術に関連した知識をまとめておくことは非常に有用であると考え、脈波形の呼吸性変動を取り上げた。

今回、取り上げたのは以下の15編である。
1.パルスオキシメータの振幅の呼吸性変動は術中の輸液負荷反応の指標になる
2.脳手術中の患者で輸液負荷の指標として一回拍出量の変動をみる
3.動脈圧変動のオンラインモニタリング
4.Datex AS/3モニター上で収縮期圧変動を測定する方法
5.低血圧患者での輸液負荷後の反応性を動脈圧とパルスオキシメータの動的な指標でみる臨床試験
6.段階的に出血させたのち輸液負荷をした場合の動脈圧変動を人工呼吸と自発呼吸でしらべる
7.人工呼吸中の動脈圧の変動
8.人工呼吸中の犬に大出血をさせたときの脈圧と一回拍出量の変動
9.手術室でパルスオキシメータ波形振幅の呼吸性変動をモニターする脈波変動指標PVI(pleth variability index)と輸液負荷に対する反応性
10.ICU患者の輸液反応性の予測
11.心臓の充満圧は血管内ボリュームの変化に対する血行動態の反応を予測するには適切ではない
12.人工呼吸患者の輸液反応性-集中治療での指標
13.プレチスモグラフの動的指標で人工呼吸中の敗血症患者の輸液反応性がわかる
14.重症の爆風損傷後の血行動態モニター上の動脈圧変動
15.小児の心臓手術後にパルスオキシメーターで奇脈を検出する
[解説者]讃岐美智義(広島大学病院麻酔・疼痛治療科)




PubMedURL:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17525584?dopt=Citation
1.日本語タイトル:パルスオキシメータの振幅の呼吸性変動は術中の輸液負荷反応の指標になる

原語タイトル,著者,雑誌名,巻,初めと終わりのページ,年:
Respiratory variations in pulse oximetry plethysmographic waveform amplitude to predict fluid responsiveness in the operating room.
Cannesson M, Attof Y, Rosamel P, Desebbe O, Joseph P, Metton O, Bastien O, and Lehot JJ.
Anesthesiology 106(6):1105-11,2007
施設:Department of Anesthesiology and Intensive Care, Louis Pradel Hospital, Claude Bernard Lyon I University, France.
[目的]全身麻酔の予定手術患者で、パルスオキシメータのプレチスモグラフィーの振幅の呼吸性変動(ΔPOP)が輸液負荷による心拍出量の上昇を予測できるか
[背景]ΔPOPと動脈圧の脈圧の呼吸性変動(ΔPP)は、前負荷の変化に鋭敏である。ΔPPはこれまでに輸液負荷によって心拍出量を全身麻酔下に陽圧換気を行っている患者でΔPOPが、輸液負荷に対する反応性の指標になると仮説をたてた。
[研究の場]手術室
[方法]25名の予定心臓手術患者で、挿管全身麻酔後に6%ヒドロキシデンプン輸液負荷を行った。その前後の血行動態(CI、CVP、PCWP、ΔPP、ΔPOP)を記録した。CIが15%以上上昇したものを、輸液負荷に反応ありと定義した。プロポフォールとスフェンタニルで全身麻酔中に、一回換気量8-10ml/kg、呼吸回数10-12回/分、PEEP0-2cmH2Oで陽圧換気を行った。
[結果]輸液負荷でCIは2.0±0.4から2.3±0.5mmHgに、ΔPPは11±7から6±5%に、ΔPOPは12±9から7±5%に変化した(いずれもp<0.05で有意差あり)。ΔPOPとΔPPは非反応群より反応群の方が大きく変化した(ΔPOP:17±8対6±4、ΔPP:14±7対6±4でいずれもp<0.05で有意差あり)。輸液負荷前のΔPOPと負荷後の%変化は有意な相関があった。
[結論]ΔPOPは、全身麻酔で陽圧呼吸中の輸液負荷の反応性の指標になる。ΔPOPは非侵襲的で臨床的に有用である。
[解説者註]ΔPOP:pulse oximetry plethysmographic waveform amplitude , ΔPP:arterial pulse pressure
[解説者]讃岐美智義(広島大学病院麻酔・疼痛治療科)




PubMedURL:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11273937?dopt=Citation
2.日本語タイトル:脳手術中の患者で輸液負荷の指標として一回拍出量の変動をみる

原語タイトル,著者,雑誌名,巻,初めと終わりのページ,年:
Stroke volume variation as a predictor of fluid responsiveness in patients undergoing brain surgery.

Berkenstadt H, Margalit N, Hadani M, Friedman Z, Segal E, Villa Y, Perel A.
Anesth Analg 92(4):984-9,2001.
施設: Department of Anesthesiology and Intensive Care, The Chaim Sheba Medical Center, Sackler School of Medicine, Tel Aviv University, Israel.
[背景]人工呼吸中の動脈圧の変動から心臓の前負荷を評価できる。
[目的]連続的に一回拍出量(SV)を表示できる装置PiCCOを用いて、SVの最大と最小の%変化(SVV:stroke volume variation)が輸液負荷の指標として使用できるかどうかを評価する。
[研究の場]手術室
[方法]15名の脳外科手術を受ける患者。人工呼吸はCO2が28-32mmHgとなるようにコントロールし、一回換気量は10mL/kgに設定した。PiCCOと動脈ラインを使用して、収縮期血圧(SBP)、HR、CVP`、SV、SVVを測定した。手術の間、輸液負荷は段階的に行い、6%ヒドロキシエチルデンプン100mlを2分間で投与した。輸液負荷後にSVが5%以上上昇したものを反応群と呼び、SVが5%以下しか上昇しないものは非反応群とした。輸液負荷は140回行った。
[結果と結論]ROC曲線でAUCを計算するとSVVは0.87で、CVPの0.493、HRの0.593、SBPの0.729のどれよりも大きかった。SVV値が9.5%以上で100ml輸液負荷時のSVが5%以上の増加を予測できる。その感度は79%、特異度は93%である。
[解説者註]SVV(%)=(SVmax-SVmin)×100/SVmean
AUC(Area Under the Curve)はROC 曲線の曲線下面積のことであり、直感的にはROC 曲線の左上角への近づき程度をしめす指標である。また、数学的には平均的な検査の正確度を示している。AUCが大きいほど正確である。
[解説者]讃岐美智義(広島大学病院麻酔・疼痛治療科)




PubMedURL:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12707167?dopt=Citation
3.日本語タイトル:動脈圧変動のオンラインモニタリング

原語タイトル,著者,雑誌名,巻,初めと終わりのページ,年:
On-line monitoring of systolic pressure variation.
Fujita Y, Sari A, Yamamoto T.
Anesth Analg 96(5):1529-30,2003.
施設: Department of Anesthesiology and ICM Department of Urology, Kurashiki-City, Okayama, Japan
[背景]最近の研究では、機械的人工呼吸を行う患者の血管内ボリュームの指標として、呼吸性の動脈圧変動であるSPVやその陰性あるいは陽性成分(dDownやdUp)、脈圧変動(dPP)が用いられている。これらの測定のためには、動脈ラインやパルスオキシメータが必要で、オフラインでは計測と計算が面倒である。 
[目的]連続的に、患者監視モニターのSPV、dDown、dUp、dPPを取得して表示させるモニターを開発する。
[研究の場]モニターとPCプログラミング
[方法]IBM互換機と16ビットのA-Dコンバータを用いて、患者監視装置から気道内圧と動脈圧を1000HzでサンプリングするプログラムをVisualC++で記述した。
[結果]気道内圧と動脈圧を同期してマッピングすることでSPV曲線を示すことができた。
[結論]SPVのオンラインベッドサイドモニターは、機械的人工呼吸を承ける患者のルーチンの血行動態モニターとして実現可能である。
[解説者註]dDownは呼気終末での収縮期血圧をベースラインとしたときの、そこからの収縮期圧の低下(呼気時)で、dUpは収縮期圧の上昇(吸気時)を指す。dPPはdelta pulse pressure variationで、パルスオキシメータの脈圧の呼吸性変動。
[解説者]讃岐美智義(広島大学病院麻酔・疼痛治療科)




PubMedURL:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15920243?dopt=Citation
4.日本語タイトル:Datex AS/3モニター上で収縮期圧変動を測定する方法

原語タイトル,著者,雑誌名,巻,初めと終わりのページ,年:
Measurement of systolic pressure variation on a Datex AS/3 monitor.
Gouvea G, Gouvea FG.
Anesth Analg 100(6):1864,2005.
施設: Department of Anesthesiology, Liver Transplantation Program, Hospital Geral de Bonsucesso, Department of Anesthesiology, Hospital dos Servidores do Estado, Rio de Janeiro, Brazil (F. Gouvea)
[背景]収縮期圧の変動(SPV)は血管内ボリュームを評価する方法として用いられ、多くの研究からハイボポレミアの診断に果たす役割として確立している。また、FujitaらによってオンラインでSPVを測定できる外部機器が開発されたが、問題はコストがかかるだろうということ(著者らは、それを書いてはいないが・・・)。
[目的]AS/3単体でSPVを計測する方法を見つけた。
[研究の場]手術室
[方法と結果]AS/3には、観血圧モニターチャンネルにある、”wedge pressure”メニューを利用する。1.体動脈圧のラベルを”pulmonary artery pressure”に変えて、スケールは、体血圧に応じて変える。2.”wedge pressure”メニューに入って「回して押す」ComWheelを押す。スクリーンはフリーズして、青い水平線が表示される。その水平線は、ComWheelを回すことで上下するとともに、その値を数値で表示する(102mmHgとか95mmHgとか表示される)。その水平線を、動脈圧波形の一番高い位置にある場所と一番低い位置にある場所に合わせて、夫々の値を読むのである。その差がSPVということになる。
[解説者註]SPV:systolic pressure variation。解説者も長い間、DATEX社のAS/3モニターを使用してきたが、このような基線を表示させて基線の値が数値で表示できる(数値が読める)などという裏技は知らなかった。モニター単体で、リアルタイムに測定できる(引き算は必要だが)ため、簡便で利口な方法である。必要は発明の母。日本人が、外部にPCで測定できる機器を開発したことに対して、ブラジル人がアイデアや裏技で対抗したのは絶賛に値する。AS/3は、現在S/5という機種に変わっているが、これでも同様の方法で、SPVが測定できることを解説者は確認した。
[解説者]讃岐美智義(広島大学病院麻酔・疼痛治療科)




PubMedURL:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17122227?dopt=Citation
5.日本語タイトル:低血圧患者での輸液負荷後の反応性を動脈圧とパルスオキシメータの動的な指標でみる臨床試験

原語タイトル,著者,雑誌名,巻,初めと終わりのページ,年:
Arterial versus plethysmographic dynamic indices to test responsiveness for testing fluid administration in hypotensive patients: a clinical trial.
Natalini G, Rosano A, Taranto M, Faggian B, Vittorielli E, Bernardini A.
Anesth Analg 103(6):1478-84,2006.
施設: Department of Anesthesiology, Intensive Care Medicine and Emergency Medicine, Poliambulanza Foundation Hospital, Brescia, Italy.
[目的]低血圧患者で輸液負荷に反応して心拍出量の増加が起きるかどうかの予測ために、観血的動脈圧から得られる波形とパルスオキシメータの
プレチスモグラフィーの波形の呼吸性変動が同様に現れるかどうかを臨床で検証する。 [背景]低血圧患者に対する治療の最初のステップは静脈内への輸液負荷である。しかし、輸液負荷により心拍出量が増加するのは半数足らずで、残りの患者は、過剰輸液により肺水腫や末梢の浮腫の危険を引き起こす危険性がある。陽圧で人工呼吸中の患者では、気道に陽圧をかけたときと呼吸をさせていないときの動脈圧(収縮期圧)の変動が、一定量の輸液負荷により少なくなる場合には、輸液により心拍出量が増加すると予測できる(輸液反応性がある)。またパルスオキシメータの脈圧でも同様の変化が捉えられるという知見がある。
[研究の場]集中治療室
[方法]22名の陽圧人工呼吸中の低血圧患者(平均血圧が65mmHg以下)に観血的動脈圧ラインとパルスオキシメータを装着し、肺動脈カテーテルを挿入した。6%ヒドロキシエチルデンプン500mlを30分以上かけて輸液し、32回の輸液負荷の前後で、心拍出量の増加が15%以上あったかどうかを判定した。15%以上あったものを”輸液反応群”とし、動脈圧波形による変動とパルスオキシメータの脈圧の変動を比較した。
[結果]動脈圧の変動は、輸液非反応群(10±4%)vs輸液反応群(19±13%)で、パルスオキシメータの脈圧変動は、輸液非反応群(12±7%)vs輸液反応群(21±13%)であった。いずれも輸液反応群の方が、変化が大きく同程度の予測の感度、特異度であった。
[結論]動脈圧波形の変動と同様にパルスオキシメータの脈圧の変動は、輸液負荷による心拍出量の増加を予測することができる。
[解説者註]観血的動脈圧の変動%は、SV_AP=100×{(SPmax-SPmin)/[(SPmax+SPmin)/2]}、パルス動脈圧の変動%はPV_AP=100×{(PPmax-PPmin)/[(PPmax+PPmin)/2]}で計算される。ここで、SV_APは動脈圧の収縮期変動、PV_APはパルスオキシメータの脈圧変動で、PPはpulse pressure(脈波高),
SPは動脈圧の収縮期高を意味する。データ収集解析は、Datex-Ohmeda社のS/5 Collectというソフトウェアを使い、サンプリング周波数100HZで、波形を取り込み数値化してExcelで処理した。
[解説者]讃岐美智義(広島大学病院麻酔・疼痛治療科)




PubMedURL:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7537027?dopt=Citation
6.日本語タイトル:段階的に出血させたのち輸液負荷をした場合の動脈圧変動を人工呼吸と自発呼吸でしらべる

原語タイトル,著者,雑誌名,巻,初めと終わりのページ,年:
The effect of graded hemorrhage and intravascular volume replacement on systolic pressure variation in humans during mechanical and spontaneous ventilation.
Rooke GA, Schwid HA, Shapira Y.
Anesth Analg 80(5):925-32,1995
施設: Anesthesia Service 112A, Veterans Affairs Medical Center, Seattle, WA 98108, USA.
[背景]犬とヒトでは人工呼吸中の呼吸サイクル中の収縮期圧変動(SPV)の大きさが、血管内ボリュームを反映するとされている。また、この変化は、SPVだけでなくΔdown(収縮期圧の呼気終末と最も低い点の差)という指標でも報告されている。
[目的]人工呼吸と自発呼吸で段階的に出血させたのち輸液負荷をした場合のSPVを調べる
[研究の場]手術室
[方法]15名の全身麻酔で手術を行う患者で8名が人工呼吸で麻酔導入後(イソフルランで維持)に、7名が自発呼吸で麻酔導入前に以下の研究を行った(もちろんインフォームドコンセントは得てある)。人工呼吸では1回換気量を10mL/kgで正常のPCO2を保つように(呼吸回数5-8回/分)した。自発呼吸では、麻酔導入前にデータをとり、呼吸はあるがままにまかせた。データは執刀前にすべて取り終えた。動脈ラインと内頚静脈ルートを確保してSPV、Δup(収縮期圧の呼気終末と最も高い点の差)、Δdown、MAP(平均動脈圧)、HR、CVPを以下の時点で測定した。(1)ベースライン(脱血前)、(2)500ml脱血後、(3)さらに500ml脱血(計1000ml)後、(4)ヘタスターチを500ml負荷後、(5)さらに500ml(計1000ml)負荷後、(6)生理食塩水500ml負荷後の時点で、この順に脱血と輸液操作を行った [結果と結論]人工呼吸の場合には、SPVとΔdownは500ml脱血と1000ml脱血時には有意に上昇ししていたが、ヘタスターチを500ml、1000ml輸液したときには有意に減少し、ベースラインと差はなかった。生理食塩水を負荷した後はベースラインよりも低い値であったが有意差はなかった。自発呼吸では、SPVとΔdownは1000脱血でベースラインとり有意に上昇、1000mlのヘタスターチ輸液でベースラインにもどったが、明らかな変化がないものも数人いた。人工呼吸ではSPVとΔdownで血管内ボリュームの変化を追うことができたが、自発コキュでは明かではなかった。自発呼吸では1回換気量を調節できなかったからであろう。
[解説者註]今ならとてもできそうにないような、かなり実験的な内容の論文である。
収縮期圧の変動systeric pressure variation(SPV)。
[解説者]讃岐美智義(広島大学病院麻酔・疼痛治療科)




PubMedURL:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16052125?dopt=Citation
7.日本語タイトル:人工呼吸中の動脈圧の変動

原語タイトル,著者,雑誌名,巻,初めと終わりのページ,年:
Changes in arterial pressure during mechanical ventilation.
Michard F.
Anesthesiology 103(2):419-28,2005
施設: Department of Anesthesia and Critical Care, Massachusetts General Hospital-Harvard Medical School, Boston, Massachusetts, USA.
[総説]
機械的人工呼吸は中心静脈や肺動脈大動脈の流れに周期的な変化を引き起こす。ベッドサイドでよく見られる、動脈圧の呼吸性変動、いわゆる”揺れ”は血管内ボリュームを反映している。過去数年間の多くの研究が、血管内ボリュームや心臓の前負荷を反映したものとしてではなく、輸液負荷の予測指標として実証されている。これらの指標は、日常的
な臨床上の疑問の解答を示している。それは、血行動態を向上させるために輸液を負荷することができるかということである。一方、心臓の前負荷(心臓の充満圧だけでなく心臓の容積も)という静的な指標は、しばしば、このきわめて重要な質問の答えに正確には答えられない。機械的人工呼吸を従来通りの一回換気量で行っている鎮静下の集中治療患者や全身麻酔で外科手術を受ける患者で、動脈圧の呼吸性変化を信頼できる解析で行ったときにそれが可能となる。
[陽圧呼吸で動脈圧の呼吸性変動が生じる機序]
陽圧換気による胸腔内圧の周期性変動は、胸腔内圧の血管床から左房への血液の移動と静脈管流の両方に影響がある。吸気時の陽圧によって胸腔内の血管床から左房への血液が増加するとともに静脈還流が減少する。左房の血流増加は1回拍出量(SV)の増加に反映されるため、吸気時には一過性のSVおよび収縮期圧の上昇が起きる。一方、静脈還流の減少によるSV減少はやや遅れて生じるために呼気時にはSVおよび収縮期圧の低下が生じる。
[解説者註]この総説は、AnesthesiologyのCME programに選ばれています。
CME programとは、continuing Medical Education Program(医学生涯教育プログラムの略。
[解説者]讃岐美智義(広島大学病院麻酔・疼痛治療科)




PubMedURL:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15769736?dopt=Citation
8.日本語タイトル:人工呼吸中の犬に大出血をさせたときの脈圧と一回拍出量の変動

原語タイトル,著者,雑誌名,巻,初めと終わりのページ,年:
Pulse pressure and stroke volume variations during severe haemorrhage in ventilated dogs.
Berkenstadt H, Friedman Z, Preisman S, Keidan I, Livingstone D, Perel A.
Br J Anaesth 94(6):721-6,2005
施設: Department of Anesthesiology and Intensive Care, Sheba Medical Center, Sackler School of Medicine, Tel Aviv University, Tel Hashomer, Israel.
[目的]段階的に著しいハイポボレミアにしたときに、SPV、PPV、SVVが同様に、増加していくかどうかを検証する。
[背景]収縮期圧の変動(SPV)と同様に、脈圧の変動(PPV)や一回拍出量の変動(SVV)は人工呼吸の輸液負荷反応を反映する指標として使われる。
しかし、SPVとは違って、PPVやSVVは著しいハイポボレミアの状況では、有効性が確立されていない。
[研究の場]動物実験室
[方法]初期輸液負荷(循環血液量の10%の容量の膠質液)ののち、5段階(循環血液量の10%、20%、30%、40%、50%)に出血させた8頭の犬でSPV,SVV,PPVを測定した。SPVは動脈圧からの波形で、SVVはPiCCO(1回拍出量を実測できるモニター)を用い、PPVはパルスオキシメータの波形から求めた。
[結果]SVV、SPV、PPVとSVの相関は、-0.89,-0.91,-0.91であった。SVに対するCVPと心腔内のGEDV(global end-diastoric volume)の相関は、0.79と0.95であった。SPVはPPVやSVVによく相関した(それぞれr=0.97,r=0.93)。しかし。PPVは50%の出血においては400%以上の増加を認めたのに対してSVVは200%、SPVは120%の増加であった。
[結論]SVVとPPVは、著しいハイポボレミアを含む広い範囲の前負荷の状態に対応する指標である。しかし、PPVの変化はSPVやSVVより大きい。これは、大動脈内の血液が著しく減少したときの脈圧とSVとの関係による変化かもしれない。
[解説者註]1回拍出量の変動strake volume variation(SVV),
収縮期圧の変動systeric pressure variation(SPV),
脈圧の変動Pulse pressure variation(PPV)と命名されている。論文によってはSVV=ΔSV、SPV=ΔSP、PPV=ΔPPと表記されているものもある。PiCCOではGEDV(global end-diastoric volume)の評価が可能である。
[解説者]讃岐美智義(広島大学病院麻酔・疼痛治療科)




PubMedURL:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18522935?dopt=Citation
9.日本語タイトル:手術室でパルスオキシメータ波形振幅の呼吸性変動をモニターする脈波変動指標PVI(pleth variability index)と輸液負荷に対する反応性

原語タイトル,著者,雑誌名,巻,初めと終わりのページ,年:
Pleth variability index to monitor the respiratory variations in the pulse oximeter plethysmographic waveform amplitude and predict fluid responsiveness in the operating theatre.
Cannesson M, Desebbe O, Rosamel P, Delannoy B, Robin J, Bastien O, Lehot JJ.
Br J Anaesth 101(2):200-6,2008
施設: Service d'Anesthesie Reanimation, Hopital Cardiologique Louis Pradel, 200 Avenue du Doyen Lepine, 69500 Bron, France.
[背景]パルスオキシメータのプレチスモグラフィー波形の呼吸性変動(ΔPOP)は機械的人工呼吸患者の輸液反応性を予測するが、ベッドサイドでそれを行うことは容易ではない。脈波変動指標PVI(pleth variability index)はΔPOPを自動で連続的にモニターできる新しいアルゴリズムである。
[目的]全身麻酔下の人工呼吸中の輸液反応性をPVIで予測する。
[研究の場]手術室
[方法]25名の全身麻酔中の患者。血行動態データ(CI、ΔPP、ΔPOP、PVI)を6%ヘタスターチの500ml負荷前後に記録した。CIが15%以上増加した場合に、輸液反応性あり(輸液反応群)とした。
[結果]輸液負荷でCIは2.0から2.5(P<0.01)に、ΔPOPは15から8(P<0.01)に、PVIは14から9(P<0.01)に変化した。ΔPOPとPVIは輸液反応群の方が非反応群より大きかった(平均でΔPOPは19対9、PVIは18対8)。PVIが、輸液負荷前に14%より大きいと輸液反応群と非反応群の見分けがつく(感度81%、特異度100%)。輸液負荷前のPVIと輸液負荷後のCIには有意な相関がある(r=0.67)。
[結論]PVIはΔPOPの自動で連続的なモニターで全身麻酔下の人工呼吸中の患者の輸液負荷反応性を予測できる、非侵襲的なモニターである。
[解説者註]ΔPOP:resapiraratory variations in pulse oximetory plethysmographic wave form apmlitude(パルスオキシメータのプレチスモの振幅の呼吸性変動)、ΔPP:resapiraratory variations in arterial pulse pressure(動脈圧の脈波の呼吸性変動)=100×(PPmax-PPmin)/[(PPmax+PPmin)/2]
マシモ社のRadical7というパルスオキシメータに搭載されたPVIソフトウェア(version7.0.3.3)を用いて行われた研究。
[解説者]讃岐美智義(広島大学病院麻酔・疼痛治療科)




PubMedURL:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12065368?dopt=Citation
10.日本語タイトル:ICU患者の輸液反応性の予測

原語タイトル,著者,雑誌名,巻,初めと終わりのページ,年:
Predicting fluid responsiveness in ICU patients: a critical analysis of the evidence.
Michard F, Teboul JL.
Chest 121(6):2000-8,2002
施設: Medical ICU, CHU de Bicetre, Assistance Publique-Hopitaux de Paris, Le Kremlin-Bicetre, Universite Paris XI, France.
[目的]ICU患者の輸液反応性の予測因子を調査するために、これまでに発表されているきちんと査読された英語論文を集めて再検討する
[研究の場]MEDLINE文献
[方法]1966年以降のMEDLINE文献から、集中治療を要する患者で輸液負荷を行い、輸液反応群と非反応群に分けて検討を行っているもので、心拍出量や一回拍出量で輸液負荷の効果を評価しているもの。そして輸液反応群と非反応群の輸液負荷前の状態と比較しているものをピックアップした。
[結果]12文献が次にあげるパラメータで解析していた。(1)心臓の前負荷の静的指標(RAP:右房圧、PAOP:肺動脈閉塞圧、RVEDV:右室拡張末期容量、LVEDA:左室拡張末期断面積)、(2)動的パラメータ(ΔRAP:RAPの吸気時の減少、Δdown:動脈圧の呼気時の減少、ΔPP:脈圧の呼吸性変動、ΔVpeak:動脈血流速度の呼吸性の変化)である。輸液負荷前、RAP,RAOP,RVEDV,LVEDAは輸液非反応群より輸液反応群では、それぞれ5例中3例、9例中7例、6例中4例、3例中1例で有意に低くなかった。有意な変化はあったものの、反応群と非反応群の生き血がはっきりしていなかった。一方、輸液負荷前、ΔRAP、Δdown、ΔPP,ΔVpeakでは輸液反応群の方で有意に高く、閾値で輸液の反応性を予測できた(感度は77-95%、特異度は81-100%)。
[結論]ICU患者の輸液反応性の予測には、静的パラメータより優先的に、動的パラメータを使うべきであろう。
[解説者註]2002年のChestに掲載された、動的パラメータを輸液反応性の指標として推奨するレビュー。
[解説者]讃岐美智義(広島大学病院麻酔・疼痛治療科)




PubMedURL:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17080001?dopt=Citation
11.日本語タイトル:心臓の充満圧は血管内ボリュームの変化に対する血行動態の反応を予測するには適切ではない

原語タイトル,著者,雑誌名,巻,初めと終わりのページ,年:
Cardiac filling pressures are not appropriate to predict hemodynamic response to volume challenge.
Osman D, Ridel C, Ray P, Monnet X, Anguel N, Richard C, Teboul JL.
Crit Care Med 35(1):64-8,2007
施設: Service de Reanimation Medicale, Centre Hospitalo-Universitaire de Bicetre, Assistance Publique-Hopitaux de Paris, Universite Paris XI, Le Kremlin-Bicetre, France.
[背景]中心静脈圧は8-12mmHgを肺動脈楔入圧(PCWP)は12-15mmHgに保つというのが最近の重症敗血症管理の国際的なガイドラインでは、輸液負荷の指標として推奨されている。
[目的]輸液反応性の予測の観点から、推奨されている目標値の重要性を評価する。
[研究の場]24床の集中治療室での後ろ向き研究
[方法]2001年から2004年の間に輸液負荷を行って肺動脈カテーテルのモニターを行った連続したすべての敗血症患者(96名で150回の輸液負荷)。
[結果]150回のうち65回で輸液負荷に対して15%以上の心係数(CI)の増加がみられた(輸液反応群)。CIの増加が、それ以下のものを非反応群とした。輸液負荷前のCVPは輸液反応群と非反応群で変わりなかった(8±4 対 9±4 mmHg)。輸液負荷前のPCWPは輸液反応群が非反応群よりほんの少し低かった(10±4 対 11±4 mmHg,p<0.05)。しかし輸液反応性に対するPCWPの意義は疑問的でCVPと同様である。中心静脈圧<8mmHgとPCWP<8mmHgの輸液反応性予測の感度は、それぞれ47%と54%である。PCWPとCVPを組み合わせても単独でも、輸液反応性の指標としては変わらない。
[結論]敗血症患者では心臓の充満圧は輸液反応性の予測因子としては質がわるい。少なくとも敗血症の初期では輸液負荷の指標として使用するのは推奨しない
[解説者註]静的な指標(心臓の充満圧)を用いて輸液反応性の予測を評価した最近の論文。後ろ向き研究ではあるが納得はできる。
[解説者]讃岐美智義(広島大学病院麻酔・疼痛治療科)




PubMedURL:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12536268?dopt=Citation
12.日本語タイトル:人工呼吸患者の輸液反応性-集中治療での指標

原語タイトル,著者,雑誌名,巻,初めと終わりのページ,年:
Fluid responsiveness in mechanically ventilated patients: a review of indices used in intensive care.
Bendjelid K, Romand JA.
Intensive Care Med 29(3):352-60,2003.
施設: Surgical Intensive Care Division, Geneva University Hospitals, 1211 Geneva 14, Switzerland.
[背景と目的]2003年の総説。機械的人工呼吸を行っている患者で前負荷を評価する指標として、輸液負荷に対する循環動態の改善予測する手法を用いる頻度が増加している。陽圧換気を行っている低血圧の患者で、前負荷の予備能と輸液反応性をベッドサイドで評価するいくつかのパラメータの臨床的な有用性と正確性について論じる。
フランクースターリング曲線が示す心室の前負荷と1回拍出量(SV)の関係は、前負荷の少ない場合には前負荷を増やせばSVは大幅に増えるが、前負荷が多いところではSVはさほどあがらないことである。
この総説で取り扱ったのは、以下の内容である。いずれも輸液負荷に対する反応性をみている。
●前負荷を評価するための静的な測定
-心腔内圧の測定(右房圧、肺動脈楔入圧)
-心室の拡張末期容量の測定(PACによる右室拡張末期容量、心エコーによる右室拡張末期容量、心エコーによる左室拡張末期容量)
●前負荷を評価するための動的な測定
-動脈圧、脈圧、SVの呼吸性変化の測定(SPV、PPV、SVV)
[結果と結論]前負荷の評価はかなり正確に行えるけれど、輸液負荷を指標にした輸液反応性の臨床的な有用性が未だに論じられる。実際、輸液療法を指標にしたいづれのモニタリングが、生存率を向上させるかは明かではない。
[解説者註]
収縮期圧の変動systeric pressure variation(SPV)は動脈ラインから、脈圧の変動Pulse pressure variation(PPV)はパルスオキシメータから、1回拍出量の変動stroke volume variation(SVV)は、TEEやPiCCOから求めている。
[解説者]讃岐美智義(広島大学病院麻酔・疼痛治療科)




PubMedURL:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17393139?dopt=Citation
13.日本語タイトル:プレチスモグラフの動的指標で人工呼吸中の敗血症患者の輸液反応性がわかる

原語タイトル,著者,雑誌名,巻,初めと終わりのページ,年:
Plethysmographic dynamic indices predict fluid responsiveness in septic ventilated patients.
Feissel M, Teboul JL, Merlani P, Badie J, Faller JP, Bendjelid K.
Intensive Care Med 33(6):993-9,2007.
施設: Medical Intensive Care Unit, Centre Hospitalier, Belfort, France.
[背景と目的]敗血症患者では、非侵襲的な輸液反応性の信頼できる指標が必要である。陽圧換気中の敗血症患者で、プレチスモグラフの脈波形の振幅(ΔP_PLET)の呼吸性変動が、輸液負荷後に心係数(CI)変化の予測指標になるという仮説を立てた。
[研究の場]前向き臨床研究。11床のICU
[方法]深く鎮静された23名の敗血症の患者。観血的動脈圧ラインとパルスオキメーターのプレチスモグラフのセンサーを装着し、8ml/kg以上の一回換気量で陽圧換気を行った。8ml/kgの膠質輸液(6%ヒドロキシエチルスターチ)の負荷前後に脈圧の呼吸性変動(ΔPP)、ΔP_PLETとCI(経胸壁心エコー)を確認した。
[結果]23人の患者で28ポイントの輸液負荷反応を観察した。
輸液負荷前のΔPPとΔP_PLETはよく相関していた(r2=0.71、P<0.001)。輸液負荷後のCIの変化はΔPP(r2=0.76)とΔP_PLET(r2=0.50)はよく相関していた15%以上CIが増加したものを”反応群”としたが、全体で18回、反応群に分類されるイベントがあった。反応群では、輸液負荷前のΔPPは12%、ΔP_PLETは14%で、反応群と非反応群を分ける感度はそれぞれ100%と94%、特異度は70%と80%であった。
[結論]陽圧換気中の敗血症患者で、輸液反応性を予測するためのパラメータとしてΔPPはΔP_PLETと同じ程度、正確な指標である。
[解説者註]Biopac社のAcqKnowledge softwareを使用して動脈圧波形、パルスオキシメータの波形、心電図と人工呼吸器からの気道流速を時間を同期させてサンプリング周波数500Hzで記録し解析した。ΔPP=100×{(PPmax-PPmin)/[(PPmax+PPmin)/2]}で計算される。
[解説者]讃岐美智義(広島大学病院麻酔・疼痛治療科)




PubMedURL:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10386285?dopt=Citation
14.日本語タイトル:重症の爆風損傷後の血行動態モニター上の動脈圧変動

原語タイトル,著者,雑誌名,巻,初めと終わりのページ,年:
Systolic pressure variation in hemodynamic monitoring after severe blast injury.
Weiss YG, Oppenheim-Eden A, Gilon D, Sprung CL, Muggia-Sullam M, Pizov R.
J Clin Anesth 11(2):132-5,1999.
施設: Department of Anesthesiology and Critical Care Medicine, Hadassah University Medical Center, Jerusalem, Israel.
[症例報告]
爆風損傷後の患者の輸液管理は大きなチャレンジである。輸液過剰は肺機能障害を悪化させる一方、最善に治療されなければ組織障害を悪化させるかもしれない。3名の患者でCVPとPAOP(肺動脈閉塞圧)、TEEで測定したLVEDA(左室拡張末期断面積)と動脈圧からのSPV(動脈圧の呼吸性変動)をボリューム評価の指標として評価した。3名の患者は高気道内圧(PEEP13-15cmH2O、従圧換気25-34cmH2O、I:E=2:1)で陽圧換気をうけていた。CVPとPAOPは2名の患者で上昇(CVP 14と18cmH2O、PAOP 25と17cmH2O)していたが、もう1名では正常範囲(CVP 5cmH2O、PAOP 6cmH2O)であった。TEEは2名で行い、ハイポボレミアが示唆された(LVEDA 2.3と2.7cm2, %FS 52%と40%)。SPVは3名とも上昇(23,40,30mmHg)しており,dDownも著明に高かった(23,40,30mmHg)。このように、高圧で人工呼吸を行っている患者ではSPVはハイポボレミアの診断の助けになる。
[解説者註]気道内圧が高いとよりSPVの変動は大きく表現される。1999年の文献なので、SPVで呼吸性変動をとらえている。いまならPPVでも捉えることができるのではないだろうか。
[解説者]讃岐美智義(広島大学病院麻酔・疼痛治療科)




PubMedURL:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18665417?dopt=Citation
15.日本語タイトル:小児の心臓手術後にパルスオキシメーターで奇脈を検出する

原語タイトル,著者,雑誌名,巻,初めと終わりのページ,年:
Detection of Pulsus Paradoxus by Pulse Oximetry in Pediatric Patients After Cardiac Surgery.
Amoozgar H, Ghodsi H, Borzoee M, Amirghofran AA, Ajami G, Serati Z.
Pediatr Cardiol. 2008 Jul 30. [Epub ahead of print]
施設: Division of Pediatric Cardiology, Shiraz University of Medical Sciences, Shiraz, Iran,
[背景]吸気時に収縮期圧が10mmHg以上低下する、奇脈があるかどうかは多くの臨床上の病態(急性気管支喘息、心タンポナーデ、心不全、ハイポボレミー、ショック状態など)の診断や治療には重要である。しかし、小児で奇脈を測定するのは困難である。動脈カテーテルを留置すれば奇脈の測定が容易であるが、一般的に侵襲的な手技のため危機的な状態の患者に限られる。
[目的]小児の心臓手術後の患者の奇脈の検出に、パルスオキシメータのプレチスモグラフィーの波形(POPW)の使用を評価する。
[研究の場]心臓手術後の集中治療室
[方法]18歳以下の40人の心臓手術後の動脈圧カテーテルをモニターする患者。SPVとPOPWの振幅の変化(ΔPOPW%)を患者モニターから5つの連続したスナップショットを撮影した後、計算して比較した。スナップショットはデジタルカメラ(Cannon Power shot A530)で撮影し,フォトレタッチソフト(Corel PHOTO-PAINT 12)で処理してSPVとΔPOPW%を計測した。
[結果]奇脈の検出のために呼吸性のSPVとΔPOPW%の間には強い相関関係が認められた(r=0.682, p<0.0001)。ΔPOPW%の呼吸性変動は25%を超え、奇脈の検出感度は86.7%、特異度は88%であった。
[結論]パルスオキシメータは、小児の奇脈の検出に容易に利用でき簡単に行える非侵襲的な方法である。
[解説者註]Pulsus Paradoxus(奇脈)とは、「呼吸に伴う脈容量の変化が強調されたもので、脈が吸気の場合に弱く、呼気の場合に強くなる」所見で、胸腔内圧の上昇を意味する。正常では吸気時の収縮期血圧低下は10mmHg未満であるが,これが10mmHg以上となる。心膜液貯留による心タンポナーデに特徴的であるが,緊張性気胸,収縮性心筋炎,左室肥大,心不全,呼吸器疾患,上大静脈閉塞症候群などでもみられる。機序は,(1)吸気時に右室への血液灌流量が増加し,拡張した右室が左室の拡張を制限することや,(2)吸気時に肺血管床が拡大し,肺から左房への灌流量が減少することによる。
[解説者]讃岐美智義(広島大学病院麻酔・疼痛治療科)