2006年5月31日

気管挿管手技の事前学習サイトの構築

2004年から始まった厚生労働省の臨床研修の到達目標には、基本的手技として自ら「気管挿管ができる」ことが含まれている。気管挿管は、麻酔科および救急担当科でのみマスターできる手技であることから、多くの病院では麻酔科研修を必修としている。しかし、麻酔科での研修期間が短いため、不適当な手技のまま気管挿管の成否のみに終始する研修医も多い。気管挿管手技は、人形での実習だけでは得られない部分がおおく、教科書の記述や口頭のみでは伝えにくい要素が多い。そこで、麻酔科研修で可能なヒトでの気管挿管を前もって予習できるように、実際の動画を用いて気管挿管手技を解説するWEBサイトを構築した。

本サイトの内容は,第53回日本麻酔科学会学術集会ソフトウェアコンテスト(2006年6月1日)において、優秀賞を受賞しました。

[0 はじめに] 

気管挿管の手順

(0)マスク換気
(1)開口
(2)喉頭鏡挿入
(3)喉頭展開
(4)気管チューブ挿入
(5)チューブ位置の確認と固定

マスク換気から気管挿管操作に入ります。一連の動作を上記のように表現してみました。
特に(1)〜(3)の操作(動き)は初心者には理解しにくいため、ポイントを取り上げてみました。


[1 気管挿管の手順と要点] 

2006年5月27日

喉頭鏡の構造

ビデオでは、喉頭鏡を右側面→背面→左側面の順に観察しています。背面からみて左側の部分(左側面)は、「水かき」部と呼ばれ、舌をよけるために便利なように舌がのりやすい構造になっているのが観察できます(左右で構造が異なることに注目してください)。


喉頭鏡の構造

[3 喉頭鏡の構造と握り方] 

開口のポイント

開口操作では開口をすること以外に、前もって喉頭鏡を挿入するためのスペースを作る役割があります。

開口のポイント

[1 気管挿管の手順と要点] [4 開口]

喉頭鏡挿入のポイント

喉頭鏡挿入操作と同時に、喉頭展開を行ってはいけません。舌をよけながら挿入していくことのみに集中してください。また、頭部の傾きを維持したまま喉頭鏡挿入を行うことが大切です。次のステップの喉頭鏡を前方に引き上げる操作(喉頭展開)とは、明らかに区別してください。

喉頭鏡挿入のポイント

喉頭鏡挿入のポイント

喉頭鏡挿入のポイント

喉頭鏡挿入のポイント

[1 気管挿管の手順と要点] [5 喉頭鏡挿入]

喉頭展開のポイント

喉頭鏡挿入で、喉頭鏡の長軸と顔面の線がほぼ平行になった後に、はじめて喉頭展開(喉頭鏡長軸方向:前方に引き上げ)を行います。喉頭鏡が挿入できない状態で、喉頭展開を試みても喉頭蓋はみえません。初心者のうちは、喉頭を探しながら喉頭を展開する操作は行わない方がよいでしょう。喉頭展開の手技がきちんと身につきません。

喉頭展開のポイント

喉頭展開のポイント


[1 気管挿管の手順と要点] [6 喉頭展開]

研修医の気管挿管例1

ビデオは、麻酔科研修2ヶ月目の1年目研修医の気管挿管手技です。基本に忠実に、開口操作、喉頭鏡挿入、喉頭展開を行ってます。気管挿管後のカフ注入、呼吸音の聴診などの介助も別の1年目の研修医が行っています。


研修医の気管挿管例1

[9 症例ライブラリ] 

気管チューブ挿入

ビデオでは、気管チューブの挿入時のポイントを学習します。正中からではなく、右側からチューブが挿入されるように入っていきます。喉頭展開時に、このように両側の声帯がはっきり確認できないこともあります。先端が気管内に挿入されたところでスタイレットを抜いているため、挿入がしばらく停止しています。そのあと、カフ上にある目印の線が入っていきます。


気管チューブ挿入

[7 気管チューブ挿入] 

2006年5月26日

喉頭鏡の挿入

ビデオでは、喉頭鏡の挿入方向を学習します。喉頭鏡を口腔内に挿入するときは、右口角からブレードの先端が入るようにします。ここから喉頭鏡の先端が舌の右縁に沿って弧を描くように(舌を左によけるように)正中下方に向かって動かします。


喉頭鏡の挿入(正面)


喉頭鏡の挿入(側面)

[5 喉頭鏡挿入] 

喉頭展開時の操作方向

ビデオでは、喉頭展開時の喉頭鏡の操作方向を学習します。喉頭鏡を口腔内に挿入した後、喉頭を観察するには前方に押し出すイメージです。ビデオでは、はじめの2回が正しい展開操作方向です。後の2回は手首を手前に返しており、誤った操作方向の一例です。


喉頭展開時の操作方向

[6 喉頭展開] 

クロスフィンガー

ビデオでは、開口する際の、右手の使い方を学習します。 開口は、クロスフィンガーという方法で行います。 親指と人さし指で、患者さんの上下の臼歯の部分を大きく開きます。 ビデオに示すように、親指と人さし指の腹の部分を使います。


クロスフィンガー

[4 開口] 

開口しない喉頭展開

ビデオは、ちょっと荒っぽいのですが、上級者が何気なく行った開口しない喉頭鏡の挿入〜喉頭展開です。開口操作を行わずに、喉頭鏡挿入、喉頭展開を行ってます。初心者との違いは手の感触のみで操作を感覚として身につけているものだけが、行いうる方法です。救急の場面などで、口腔内に手を入れるのが危ない場合、このような方法を身につけているとよいのですが、一朝一夕に身につくものではありません。初心者は、まず開口する方法で気管挿管を習得してください。


開口しない喉頭展開(上級者)



[初級者と上級者の違い]



 初級者

上級者

開 口  要不要

 喉頭鏡挿入目視

盲目的(感触)

 舌の左方圧排目視 盲目的(感触)
 喉頭鏡先端操作 目視盲目的(感触) 

 喉頭展開方向 前上方のつもり 前上方+α
 チューブ先端操作 不正確 正確


[9 症例ライブラリ] 

カフ注入と聴診

ビデオでは、気管チューブの挿入後のポイントが示されています。カフを注入し、呼吸音の聴診と目視による胸部の挙上を確認します。ビデオに示したものは、ACLSの時とは聴診の方法が異なります。


カフ注入と聴診

[7 気管チューブ挿入] 

立ち位置と構え

ビデオでは、マスク換気時の立ち位置と構えのポイントが示されています。患者の頭側に真っ直ぐ立ち、左足が半歩前に出ます。右足は半身にならないように自然に置きましょう。ベットに近づきすぎず、マスクをきちんと押さえられるように体の位置を調節しましょう。マスク換気に引き続いて気管挿管を行うため、このときの立ち位置と構え方が後になって影響します。「しっくりくる」位置に立ちましょう。


[2 立ち位置と構え方] 

喉頭鏡の握り方

ビデオでは、喉頭鏡の握る位置と握り方を学習します。左手を開き、人差し指の上に喉頭鏡をのせてみます。釣り合いがとれる位置を探してください。そこが、人差し指の位置です。喉頭鏡の柄を水平に保った位置から手首は動かさないで、指を小指、薬指、中指、人差し指の順に握ってみましょう。握るだけで喉頭鏡の柄が自然な傾きを保った構えになることを確認してください。手首を返してはいけません。手首が動いていないことに注目してください。


喉頭鏡の握り方

[3 喉頭鏡の構造と握り方] 

2006年5月25日

喉頭鏡素振り

ビデオでは、喉頭鏡の素振りを学習します。 喉頭鏡を握って正しい角度をつくり、前方に展開するイメージでトレーニングします。 喉頭展開時に腰を入れて、前方に出て行くことを確認しましょう。 手持ちにならないよう上半身と下半身の動きのタイミングに注意してください。 目安として一日、100本おこないます。


喉頭鏡素振り

[8 練習法−素振りとエア挿管] 

開口操作

ビデオでは、喉頭鏡を挿入する準備段階としての開口操作を学びましょう。開口をするために、クロスフィンガーを行う場合。親指と人差し指で患者さんの上下の歯の部分を大きく開きます。開いた後に下顎が押し下げられ、舌が出てくるので、下顎を挙上する操作を行い、舌を口腔内に戻すようにしましょう。クロスフィンガーと反対の手(左手)で頭部を動かしています。側面から見ると必ず上顎より下顎が上になるような形になります。この角度が喉頭鏡を挿入する際には重要な意味を持っています。ビデオをよく観察してください。


開口操作

[4 開口] 

喉頭展開(側面から)

ビデオでは、喉頭展開時の喉頭鏡の操作方向を観察します。喉頭鏡を口腔内に挿入した後、喉頭を観察するには前方に押し出すイメージです。ビデオでは、ほんの少し前方に押し出すうごきが観察できます。決して手前に手首を返していません。


喉頭展開(側面)

[6 喉頭展開] 

挿管困難の予測

挿管困難の種類には以下のものがあります。


その予測方法としてはマランパチ分類

頚椎の可動性

[99 挿管困難]

喉頭展開時の力のイメージ

ビデオは、喉頭展開時の力の入れ方のイメージを習得する方法です。左手で、喉頭鏡を握ります。右手で、喉頭鏡のブレードの根本を手前に引っ張りながら、それに抗するように左手で喉頭鏡を前方に押し出します。誤った力の入れ方は、ビデオの後半部分に示されている、右手でブレードの先端を手前に引っ張りながら、それに抗するように左手で喉頭鏡を前方に押し出すイメージです。このイメージでは、結果として喉頭鏡を握っている左手首が手前に返ってしまうので喉頭展開の悪い例になります。よい例では、喉頭鏡を前に押し出したとき必然的に喉頭鏡を握っている手(左手)の小指側に力が入り、悪い例では人差し指側に力が入ります。


喉頭展開時の力のイメージトレーニング

[6 喉頭展開] 

挿管困難症

麻酔科専門医程度の気管挿管に熟練した医師でもMacintosh喉頭鏡では挿管ができない場合がある。すべての症例でMacintosh喉頭鏡で気管挿管できるとは限らない。そのことを肝に銘じておこう。気管挿管ができないのに、無理をして何度も喉頭鏡を挿入するのを繰り返すことは、喉頭浮腫の原因にもつながるので、そのような事態は避けるべきである。

[99 挿管困難]

2006年5月24日

ファイバー挿管

必ずしもすべての症例でMachintoshを使って気管挿管ができるとは限りません。挿管困難症例は常に念頭に置かなければいけません。無駄に、喉頭鏡を使った方法に固執して、合併症をおこすより適切な別の手段を用いるべきです。その一つの手段がファイバーを使った気管挿管です。この手技は熟練を要するため研修医の必修項目ではありませんが、ビデオでどのようなものかを見ておくことに意義があります。ファイバー挿管の症例を見ておきましょう。


ファイバー挿管

[9 挿管困難] 

エア挿管

ビデオでは、エア挿管を学習します。 マスク換気から開口、喉頭鏡挿入、喉頭展開、気管チューブ挿入までを一連のイメージとして、メリハリをつけながら、イメージトレーニングをします。 手順だけでなく、各々の場面でしなければならないところを強調して確認しましょう。 目安として一日50本、おこないます。


エア挿管

[8 練習法−素振りとエア挿管]