初期研修医向け

PK/PDことはじめ(1)

薬理学の話かと思えば、研修医にはつまらない(薬理学の先生、すみません)。うまく麻酔をかけることができるようになる手法の話だと興味がわく。吸入麻酔薬を使っていた時代はあまり、PK/PDなど興味がなかった。静脈麻酔薬を使い始めてPK/PDを考えるようになった。
それは、なぜか。
吸入麻酔薬は、何%に気化器のダイアルを設定して人工呼吸を続けていれば、いずれはその濃度付近に落ち着くのである。吸入濃度≒血中濃度である。今では、呼気ガスの麻酔薬濃度もガスモニターで常時測定ができる。
もう10年ほど前になるがインハレーションボーラスなる言葉が流行した。吸入濃度を急激に上昇させて効果部位(それだけではないが。。)の濃度を速く上昇させて、急激な侵襲に備えようとするワザである。しかし、後追いになるか、早めに対処をしたとしても予想した侵襲がなく、無意味に濃度を急上昇させる結果になった(管理人はそうであった。もっとうまくできた先生もいたかもしれない)。結局、吸入麻酔薬を鎮静薬として使用していたのではなく、生体反応を抑える(血圧をコントロールする?)ことに使用していたからに他ならない。現在の様に、鎮静薬として割り切って使用していればインハレーションボーラスなどというワザを多用する必要はなかったと思う。
プロポフォール発売以前の静脈麻酔といえば、基本的にチオバルビツレートで、さます麻酔をしたいのならば、麻酔導入にしか使用できなかった。持続で使用する場合は、さます気がないか、麻酔以外の作用を期待する場合である。チオバルビツレートは、排泄半減期は5−11時間と長い。しかし、(効果器以外への)再分布により覚醒は速やかで、数分程度で覚醒する(分布半減期は3分ぐらい)。それに、呼吸抑制や循環抑制が強くリスクの悪い(よれよれの)患者さんには、使用しにくいため静脈麻酔を使用する機会は限られていた。ケタラールやミダゾラムもあったが、持続で積極的に使用してみようと思うほど、麻酔からの覚醒はよくなかった。やはり、導入に使う薬であるという認識だった。
1995年頃にプロポフォールが導入されると、静脈麻酔薬のくせに覚醒がよく(覚醒の質がよい)、管理人の静脈麻酔薬に対する印象を大きく変えた。たぶん、管理人だけではなく日本全国のプロポフォールファンの麻酔科医がたくさん出現した。
発売当初の頃は、プロポフォールの使い方は10−8−6 mg/kg/hrと導入時にステップダウン(Prys-Robertsの3段階投与法)し、麻酔維持にはその付近で、何となく上げ下げする方法であった。麻酔時間が短いと、覚醒は良いのだが、長時間になると覚醒遅延がおこる症例があった。覚醒遅延を起こすたびに血中濃度を測定するか予測する方法があればいいのにと考えたものだった。しばらくすると、事前に血中濃度をエクセルのワークシートで計算しておいて麻酔に入ればいいのではないかと思うようになった。この方法では、毎回、事前作業が伴うために面倒になった。そうこうしているうちに、pEEGなる脳波計が発売され、これをみながら投与速度を少しずつ下げてみる方法を見いだした。この方法では、血圧や脳波をみながら減量するのだが、ある程度鎮痛がしっかり効いていないと、急激に覚醒してくる。ここで、メインとなる鎮痛薬は、1990年代後半なのでフェンタニルである。というか、フェンタニルしかない。フェンタニルをたくさん入れると覚醒しなくなる神話が、いろいろなところで残っていた頃である(現在も残っているところがあるかもしれないが…)。フェンタニルとプロポフォールの組み合わせの麻酔を、BISモニターなし、TCIポンプなしで行っていた時代である。
どうしても、フェンタニルとプロポフォールの血中濃度が知りたい。反復投与しても持続投与しても大丈夫なお手軽な、術中に使える静脈麻酔薬の血中濃度シミュレータが欲しい。
そんな期待に応えて、当時、国立循環器病センターに勤務されていた内田整先生が開発されたPalmacokineticsが発表され、フリーソフトウェアとして配布された。Palmacokinetics=Palm+Pharmacokineticsの造語でPalmでPharmacokineticsという意味である。Palmとは現在は日本では入手しにくくなったが、SONYが発売していたCLIEという電子手帳が搭載していたOSである。このCLIEも製造中止になりPalmacokineticsが動くPalmが日本にないことから、Palm版は昔からのユーザーしか使用していない。その状況を見てWindowsMobile版を開発中とのことである(ほぼ完成しているらしい)。

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