以前に麻酔管理の3Aと3Bというのを紹介した。麻酔管理の3要素とは、3Bで表現できる。BP(Blood pressure:血圧、特に平均血圧)、BT(Body temperature:体温)、BIS(BIS値:脳波から導き出される大脳の活動度、鎮静度)である。麻酔管理は、全身麻酔中に3A「鎮痛(Analgesia:無痛)、鎮静(Amnesia:健忘)、筋弛緩(Akinesia:不動)」を満たすようにモニタをつかって生体を管理しつづけ、その最後には問題なく元の状態に戻ること。麻酔を導入したらおしまいというのではなく、研修医が学ぶべきことは麻酔維持中の状態をコントロールすること(指導医がどのようにコントロールしているかを見取ること)。麻酔薬の上げ下げだけに終始するのでなく、管理目標を設定してその状態に保つには、そのとき何をすべきかを判断すること。たとえば、リスクがない患者であっても3Bを意識する。血圧の管理目標は平均血圧で65以上に、体温(中心温)は37.0℃、BIS値は50を保つために、どうすべかを常に考えること。アラームが鳴らない時のモニタは眺めるものではなく、何をすべきかを考えさせる判断材料を与えてくれるものである。麻酔中は、モニタだけでなく、術野や、麻酔科医が行っている医療行為(麻酔薬投与、輸液や輸血、体温管理、人工呼吸および循環管理)を含めて状態の変化を考えること。といった。
勘違いして欲しくないのだが、気道管理や代謝管理がないと思っている研修医のためにうるさめバージョン「麻酔管理の5B」というのもある。5Bとは、Breath(呼吸管理)、BP(Blood pressure:血圧、特に平均血圧)&Beat(心拍数とリズム)、BT(Body temperature:体温)、BIS(BIS値:脳波から導き出される大脳の活動度、鎮静度)、BS(Blood suger血糖)である。麻酔管理は常に5Bを意識する。呼吸は気道確保だけでなく呼吸の調節を含む。また、最後に加えた血糖というのは、血糖をコントロールできるようにきちんと手術侵襲に勝てるような麻酔を行うことである。数年前から流行っている鎮痛主体の麻酔では手術侵襲によるインスリン拮抗ホルモン(アドレナリン、ノルアドレナリン、コルチコステロイドなど)の抑制が確認されており血糖コントロールは容易になってきている。これは何も術前合併症としての糖尿病患者の話ではなく、手術を受ける患者すべての話である。BS(Blood suger血糖)の目標は高くても150mg/dl前後に!術中に外科的糖尿病状態Surgical diabetes にしない麻酔を目指すのである。
麻酔管理の5B(うるさめバージョン)
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