麻酔科専門医/指導医

術中覚醒についての議論

今、麻酔ディスカッションリストで術中覚醒が再度、議論を呼んでいる。3月にも一度、議論になったことがあるが、今回のは日本麻酔科学会学術集会の話題を受けての議論である。
術中覚醒はある確率で起きるのは事実であるが、0にはならない。術中覚醒の確率は、0.2%程度であるといわれています(NEJM 358:1097-1108,2008)[日本語訳の抄録]。
こういった議論の中で、術中覚醒を引き起こすのでTIVAを行うのはどうかという逆行性の意見が必ず出てきます。では吸入麻酔なら起きないのでしょうか?麻酔薬の血中濃度を意識しなければ同じでしょう。吸入麻酔薬だって濃度を下げれば覚醒するからです。術中覚醒を論じるに当たって、TIVAだからとか吸入麻酔だからという議論はナンセンスです。術中覚醒を少なくするにはどうすべきかという議論をするのに、麻酔薬の血中濃度(吸入麻酔薬も同じです)や手術侵襲の変動を無視した議論では先に進みません。手術侵襲が大きくなっているのに麻酔薬濃度を比較的低濃度にして管理している場合には覚醒する可能性があります。
もう一つ、術中覚醒のモニタリングとして脳波(のような脳内の情報)をきちんとモニターする(精通する)ことが大切だと思います。BISモニターでBIS値のみを見ているようではいけません。NEJMの論文ではBIS値のみを比較していて、おなじBIS値だからといって同じパターンの脳波はであるとは限りません。


以前にもmsanuki.netに「「術中覚醒」が議論を呼んでいる」で書きましたが、管理人は、麻酔のかけ始め麻酔からの覚醒間際で明らかに覚醒していないであろうと思っても、必ず、患者さんに「大丈夫ですからね」、「○○しますよ」と声をかけている。

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