初期研修医向け

ミズチバ、ウスチバ、ユカチバ、ユルチバ、トメチバ、ウソチバ、カラチバ

ultiva.pngアルチバは発売以来、多くの施設で採用され全身麻酔には必須のオピオイドになった。きちんと使用すれば、名人でなくとも上手な麻酔管理ができる可能性がある魔法のような薬であると思う。しかし、使い方を誤れば危険きわまりない薬であることも確かである。今回は、上手な使い方ではなくトラブルに関連する言葉を紹介しよう。(1)ミズチバ、(2)ウスチバ、(3)ユカチバ、(4)ユルチバ、(5)トメチバ、(6)ウソチバ、(7)カラチバである。有名な言葉もあれば、管理人のオリジナルの言葉もある。一番有名なのは(1)ミズチバである。これは、アルチバが粉末で提供されているため、起こりうるトラブルをあらわす言葉である。アルチバを溶かさずに生食や蒸留水(溶解液)のみを注射器に入れて、アルチバラベルを貼り付けてシリンジポンプにセットしてしまうことを表す言葉である。水をアルチバと思って投与するから来ているのであろう。これは、全国区の言葉である。(2)ウスチバというのもある。これは意図的に行われることが多い。アルチバを溶かす際に、こぼしてしまったため、さらに溶解液で希釈してシリンジポンプにセットしている状態を指す。これは、「今日のアルチバは効きにくい」と指導医が言葉を発したときに、希釈した者がその真相を明かさなければ決してばれない。希釈現場を目撃されている場合は、話は別である。(3)ユカチバというのもある。これは、アルチバに延長チューブ(エクステンションチューブ)を接続したが、エクステションチューブを輸液ルートに接続せずに、アルチバを床に流すことを指す。(4)ユルチバも同様の意味だが、シリンジとエクステンションチューブあるいは輸液ルートとの接続が緩んでいて、アルチバが漏れている状態を指す。ロックつきでない注射器やエクステンションチューブを使用していると起こりやすいが、ロック付きを使っていてもきちんと閉めていないとおきることがある。(5)トメチバというのは、エクステンションにロックがついたタイプの物や3方活栓を使っている場合に起こりうる。ロックを外さすに注入を開始するか3方活栓を開かずに注入を開始したときに起きるものである。この場合はシリンジポンプのアラームが鳴って気づく。また、アルチバの効果が強く出て、シリンジポンプを一時停止した場合に、止めていたことを忘れていた場合にも使う言葉である。シリンジポンプは、2分間停止しているとアラームをアラームがなるのであるが、たまたま、そのとき周りが騒々しくて音が聞こえない場合、さらに長時間停止していることに気づかない場合などである。(6)ウソチバというのは、ガンマ計算(管理人はガンマは口語であると思うのだが、テルモのシリンジポンプには堂々と表記してある。)つきのポンプで投与した場合、1mg/mlの希釈数値以外、あるいは体重kgを誤って入れた場合に起きる投与速度の誤りである。たとえば、体重80kgを8kgと入力すれば、投与速度はガンマの値を信用して入力すれば1/10になる。(7)カラチバというのは、ミズチバとと同じ意味を表すこともあるが、別の意味もある。シリンジ混入した空気をきちんと追い出さずにポンプにセットした場合、最後は空気を押していることになる。大抵はエクステンションチューブ内で空気は止まるので患者には入らないが、その後が問題である。次のアルチバをセットするときに、エクステンション内の空気を抜くのに時間がかかり、手間取ることが多いからである。ご存じの通り、アルチバの半減期は短いため、すぐに血中濃度が下がっていく。ぎりぎりの濃度で麻酔をしている場合には、特に慌てることになる。トラブルが起きるからといって不必要に高濃度で行うのも問題ではあるが。。。。
薬剤バーコードラベルに思う(msanuki.net)
成長した?フェンタのシール(msanuki.net)
この中で、最もまずいのはミズチバである。他のものは、状況を見たり聞いたりすれば判断できるのであるが、ミズチバだけは、思い込んでいる場合があるので、気づきにくい。管理人のようにいつもミズチバでないかと疑ってチェックする習慣がある場合は別であるが。。。(研修医を疑うわけではないが、必ずチェックする)。この、ミズチバであるが、一番の原因はラベルが別付けになっていることが、それを誘発すると考えている。他の薬剤、たとえばフェンタニル(三共)やエスラックス、ブリディオン、エフェドリンなどはアンプルやバイアルに切り離せるラベルがついている。現在、このようなラベルがある薬剤が増えている中、アルチバがどうしてバイアルに切り離せるラベルをつけないのか。別付けのラベルは、以前は当たり前であったが今は亜流である。当院の麻酔カートに入っている、希釈する薬剤でアンプルに切り離せるラベルがついていないのは、ネオシネジンぐらいである。また、最近はプレフィルドシリンジも多く発売されており、余計な手間を省くことで、その過程で生じるトラブルを未然に防ぐ対策が取られている。
ミズチバの発生する状況は、溶解液だけを吸ってラベルを貼り付けているときに起きるのである。以前、ある先生が溶解液を吸ってラベルを注射器に対して縦に貼っていたことがあったが、それを見た別の先生が正しい位置に貼り直してシリンジポンプにセットした事例があった。
「とにかく、別付けラベルはアルチバを希釈した後でないと貼り付けてはいけない!!」
別付けラベルではなく、バイアルに切り離せるラベルを早期につけてもらうことを希望する。 by さぬちゃん

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麻酔科学教室 20220101

●だいたい北から南に並んでいます(間違いや不足があればお知らせください)

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