麻酔中の加温~寸暇を惜しんで加温する
手術室で麻酔科管理で行う手術においては、患者さんをはじめから加温するというのはすでに常識になっていると思っていた。外勤先の病院では、何も言わなくてもさっさと加温を開始してくれる。麻酔導入後、外科医が手洗いに行っている間にも温風式加温装置が作動している。寸暇を惜しんで加温するという言葉がぴったりである。
しかし、お膝元の病院で、ある日、かなり経験豊富であるはずの看護師が、体温が36度になったら加温しますね!というのを聞いて驚いた。おもわず「えっ??」と声が出てしまった。すでに体表面は冷たい。体温が下がってからでは遅いのである。麻酔中にはかっているのは中心温(中枢温)で腋窩温とは違う。おまけに、これから行われるのは開腹術である。
温風式加温装置は加温ではなく蓄熱である。加温すればすぐに体温が上がるのではなく、熱が体内に入って循環しなければ中心温はあがらないのである。
一昔前はどうやって体温が下がらないようにするかで悩んでいた時代があった。今は、よい加温器具が普及して方法も確立していると思っていた。まだまだ啓蒙が足りないと感じた。