マイケル・サンデル先生の授業の進め方に思う
年始にマイケルサンデル先生の「ハーバード白熱教室」の再放送があった。内容は以前にも見ていたのでそれほど新鮮みはなかったが、今回、見直して参考になったのは、講義の進め方やプレゼンの方法である。まず、ジョブズとちがって、プレゼンにもったいをつけない。聴衆とのやりとりに中で、間を持たせる場面はない。その必要がないのだ。聴衆が完全にサンデル先生を絶対視しているため、その答えを期待している。早く正解を知りたいと思っていると言うことだ。その手法には、我々が研修医の指導をするときに参考になる要素が多く含まれていると感じた。サンデル教授のやり方をまとめると、
1. 参加者の意見を整理し、シンプルにして言い直す。
2. 望ましい答えが出るまで(ある程度は)我慢強く聞き続ける
3. 駄目だと思ったら、ばっさり切って別の人に繋げる
そして、必ず、自分が話の主導権を握っていると言うことだ。通常は1と2は指導者ならある程度の人ができると思うのだが、3に関してが、その能力を大きさを示すものであると思っている。これができるかできないかが指導者としての資質であると思う。相手が多数なら、別の人にふればよい。もし、マンツーマンの指導であれば、指導者のやり方(ヒントや要領をしめす)を見せるということになると思う。1と2を繰り返すのみであれば時間がいくらあっても足りないのである(3のやり方がサンデル先生は非常にうまい。話を切り替える部分に関しては、似ているが別の例を提示して条件を狭くしている。ここが非常にうまいのだ)。
サンデル先生が、これができるのは聴衆との間に、絶対的な哲学の知識や考え方の能力の違いがあるからだと思う。ちょっとわかっているぐらいだと、方向性を見失ったり、間違ったことをしていても自身を持ってそれをただすことができない。制止することができないのである。指導者として目指すのは、自分自身がぐらつかない知識や技術を身につけること。間違っていたら正しい方向に導くことができることである。そのように導いていく課程で、聴衆(相手)を従わせることができるカリスマ性であると感じた。
ジョブズのプレゼンとはまた違った味があり、アカデミズムを感じさせるよい例である。