ミズチバ撲滅大作戦
現在、「ミズチバ」が通じない麻酔科医はいないだろう。「ミズチバは人災である」と管理人は断言する。ミズチバとはアルチバ(一般名レミフェンタニル)というバイアル瓶に粉の状態で入っている麻酔用の超短時間作用性の麻薬を、生理食塩水に溶解したつもりで生理食塩水を投与することである。なぜ、このようなことが起きるかは以前にもこのブログで解説(ミズチバ、ウスチバ、ユカチバ、ユルチバ、トメチバ、ウソチバ、カラチバ)した。ミズチバ防止のために、システムで対応しようと考えたが、実際のモノが入っているかどうかは別問題である。これに関して、以前に、アルチバのバイアルに注射器に貼るシールがなく、別付けでまとめてシールが存在することがいけないと書いた。そうしたら、ヤンセンさんはついに、アルチバから切り取り線で注射器に貼るシールがはがれるようにしてくれた。そうしたら、ミズチバは防止できると考えた。この発想は、きちんとアルチバを注射器に希釈する手順が守られているという前提である。その手順とは、(1)注射器に必要量の生理食塩水を吸う。(2)アルチバを溶解する。(3)アルチバのバイアルからシールを切り取って貼る。これで、1本目のミズチバはなくなるだろう。次が問題である。1本目のアルチバのから注射器を再利用している場合には、2本目(3本目)以降のミズチバが発生するリスクがある。賢い読者は、気づいたとおもうが、1本目のシールがすでに貼られてるからである。そこで、アルチバの溶解には注射器は再利用禁止令を出す。これで、大丈夫のはずだ。これでも、まだだめである。昔のアルチバシールが大量に余っていて、それを貼るモノが出てくるのである。昔のアルチバシール回収キャンペーンをやってくれないかなー。アルチバシールをすべて回収できたら、クレヨンしんちゃんの携帯ストラップをくれるとか。なぜ、クレヨンしんちゃんなのか。それは、管理人がここ数年行っている、アルチバのバイアルのお尻を見せる大作戦に起因する。アルチバは粉で提供されているので、溶解していない場合には白いが、空瓶のばあいには透明だからである。みなさんもクレヨンしんちゃんのお尻をおもいだして、アルチバのお尻をチェックする作戦を行ってみてはいかがだろうか。アルチバに色をつけてほしいとかいう要望が出ていると聞くが、それほど、ミズチバは深刻なもんだいである。超強力な鎮痛薬を投与していると安心していると、それは水を投与していて、麻酔とはかけはなれた状態になる。すべての人がパニックに陥る可能性がある。
指導医たる者、ミズチバを見破るだけの力が必要である。ミズチバだったら、バイタルサインはガタつくし、他の麻酔薬が大量に必要だし、高いBIS値が継続する。体動もおきるかもしれないし、、、覚醒傾向がつづくのである。
そういった状態になる前に、ブツを確認することが大切である。
そうそう、昔、管理人が研修医の頃、一つ上の先輩に言われたことを思い出した。「麻酔準備をしている最中に、どんなに偉い先生に用事をいいつけられても、確認ができるまでは作業を途中でやめないこと!」これは、薬剤の希釈にもいえるのであるが、機器の点検などにも通じることである。
たとえば、教授に何かをしてくれと頼まれても、準備が確認できるまでは持ち場を離れてはいけない。自分の担当している患者のために、あとから教授にしかられたとしても、それは患者のためだから誇りに思え。いいわけなどしなくてもよいし、残念がることではない。ということである。